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引退の花道を飾った”女王”グランアレグリア。最後まで豪快に駆け抜けた名牝と調教師の秘話

三好達彦

2021.11.22

 この勝利でJRA通算1500勝を達成したクリストフ・ルメール騎手は、「勝てて安心しました。いちばん大事なのはラストランで本当のグランアレグリアを見せることでした。彼女は最初からトップレベルの馬で、いつもいい競馬をしてくれました」と賛辞を寄せるとともに、「これから寂しくなります」と惜別の言葉も口にした。

 ルメール騎手が話したように、いつも全力でターフを駆け抜けたグランアレグリア。18戦のうち馬券圏内を外したのは、NHKマイルカップ(GⅠ)での5着(4位入線)と、大阪杯(GⅠ)5着の2回のみで、図抜けた能力だけではなく、2歳の春から5歳の秋まで長い間、高いモチベーションを保ち続けたのも名馬の名に相応しい。

 2、3着に食い込んだシュネルマイスターとダノンザキッドは、両頭の騎手がともに”女王”に対しての完敗を認めたものの、まだ発展途上にある3歳という年齢を考えると、古馬になってからの活躍が約束されるような素晴らしい走りを見せたと言える。同じく3歳馬で、逃げて5着に粘ったホウオウアマゾンも侮れない存在になるだろう。

 3着とはハナ差の4着に食い込んだインディチャンプは、19年の本レースの覇者らしく、実に味のあるレースを見せ、まだまだ一線級と互角に戦える力を示した。来年も馬券検討の対象から外すことはできない、しぶといベテランランナーとして走り続けてほしい。
 
 最後に筆者の思いを記しておきたい。

 今回の勝利でマイルチャンピオンシップ6勝という、自身の持つ最多勝記録を更新した藤沢和雄調教師。振り返れば、初めてGⅠ制覇を達成したのはいまから28年前のこと、93年のシンコウラブリイでのことだった。

 欧州での修行や、野平祐二さん(元調教師・故人)のもとで三冠馬シンボリルドルフの調教に携わった経験などから、速い時計を出さない調教、数頭がまとまって馬場へと向かう集団調教など、日本ではそれまで採用した人がほとんどいない革新的な方法論を藤沢調教師は取り入れてきた。当初は”村社会”のなかで少なくないハレーションを引き起こしたそれらの調教法が、いまでは普通に取り入れられているのは氏の大きな功績にほかならない。

 前進気勢が強いシンコウラブリイも、走るモチベーションを失わせないようにそうした方法論で根気強く育て上げ、マイルチャンピオンシップ優勝へと結びつけた。それは氏の後の活躍を高らかに宣言するような、見事な勝利だった。筆者の記憶に深く刻まれていたその鮮烈な記憶が、今回のグランアレグリアのマイルチャンピオンシップによって再び蘇った。

 天皇賞の前の9月末。取材で尋ねた藤沢和雄調教師は、グランアレグリアを指して「最後の秋シーズンを彼女のような素晴らしい馬と迎えられるのは調教師冥利に尽きる」と噛み締めるように口にした。

 氏の定年引退は来年の2月末である。

文●三好達彦

【関連動画】有終の美!グランアレグリアが強さと速さを見せつけたマイルチャンピオンシップのレース映像
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