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“異色のキャリア”のヴェラアズール。渡辺薫彦調教師が下した英断が大舞台で花開く【ジャパンカップ】

三好達彦

2022.11.29

 ヴェラアズールは、父が2010年の日本ダービーや2012年天皇賞(秋)を制したエイシンフラッシュ、母ヴェラブランカ(父クロフネ)という血統。エイシンフラッシュ産駒としては初のGⅠ制覇となった。

 素質は評価されていたものの、馬体が大きいため脚元に負担がかかることなどもあって、デビューから16戦にわたってダートを使われていた本馬。「いつか芝を使いたいと思っていた」という渡辺調教師が英断に踏み切ったのは今年3月。淡路特別(2勝クラス、阪神・芝2600m)を快勝すると、芝路線に転向して4戦目のジューンステークス(3勝クラス、東京・芝2400m)も勝利を挙げた。

 そして秋初戦、初の重賞挑戦となった京都大賞典(GⅡ、阪神・芝2400m)でも実績馬をなで斬りにして圧勝。ここまでの芝5戦では、全て上がり3ハロンの最速タイムを叩き出していた。

 GⅠ初挑戦となったジャパンカップ。6番枠から出たヴェラアズールは中団馬群の後ろ目でロスなくインコースを進み、抜群の手応えで直線を向いた。”止まらない”内に各馬が殺到したため前が壁になったものの、ライアン・ムーア騎手はじっと我慢し、僅かにできたスペースを急襲。

「追い出したときに勝ったと思った」とムーア騎手が言うように、ヴェラアズールは自慢の末脚を爆発させて一気に突き抜けて快挙を成し遂げたのである。ちなみに上がり3ハロンは33秒7と、シャフリヤール、デアリングタクトと並び、またも最速タイを記録していた。

 文字通り”我慢”の末に芝へ路線変更し、今回の勝利を勝ち取った渡辺薫彦調教師。騎手時代には1999年菊花賞(GⅠ、京都・芝3000m)を制したナリタトップロードとのコンビで知られるトレーナーは、「こちらの想像を超えた走りをする馬で、まだまだ良くなっていくと思う」と先々への夢を広げていた。

 もうひと言付け加えるなら、”スローペースの上がり勝負”に強いというキャラクターは、同じ傾向のレースとなった日本ダービー、天皇賞(秋)を制した父エイシンフラッシュと非常に似ている。これからも、こうしたレースではマークを怠れない存在となるだろう。
 惜しくも2着に敗れたシャフリヤールは、馬体の良さが際立っていた1頭。惜しむのは15番という外枠からのスタートになったため、終始、馬群の外々を回らされたこと。その距離損を考えれば勝ちに等しい能力を発揮したと言ってよいだろう。さすがダービー馬、海外GⅠの勝ち馬だと言える走りを見せた。

 3着のヴェルトライゼンデは、先行勢のなかで唯一粘り切ったタフさが光った。ムラ駆けの傾向がある馬だが、ホープフルステークス(GⅠ、中山・芝2000m)で2着、日本ダービーで3着と大舞台で好走している実力をあらためて示した。

 5着に敗れたダノンベルーガは、いったんは先頭をうかがいながら、最後は脚が止まった印象。抜け出してきたヴェラアズールと、内へもたれたシャフリヤールに挟まれて、川田将雅騎手が立ち上がるシーンが見られたが、この時点ですでに両脇の2頭を跳ね返すだけの脚勢はなかったように見える。追い切り後の共同会見で堀宣行調教師が、「2400mとなると工夫が必要」と話していたが、2000mがベストで、2400mは彼にとって距離的に少し長いのかもしれない。

文●三好達彦

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