青学大は全日本で敗れてから、原晋監督の眼光は鋭くなっている。世田谷ハーフ、MARCH対抗戦における見極め、そしてポイント練習をどれだけの余力を持ってこなしているか、感覚を研ぎ澄ませて学生たちを観察している。
今回のエントリーで特徴的なのは、16人中9人が4年生ということ。しかし、そのなかに宮坂大器主将の名前がなかった。
宮坂は3年まで駅伝を走った経験がなかったが、人望が厚く、責任感も強い。そして、今年の全日本ではアンカーを任されたが、順位を落としてフィニッシュ。キャプテンが16人に入るかどうかは注目点のひとつだったが、原晋監督は実力者16人をそろえた。
キャプテンを外せるほどの陣容。層の厚さだけを比較するなら、駒大より、青学大の方が上かもしれない。
選手層が厚いということは、ブレーキが連鎖しないことを示す。つまり、想定通りの走りが出来ない区間があったとしても、次の区間で盛り返せるということだ。その「復元力」については、この2校が抜きんでている。
駒澤と青山学院。両校の雌雄を決するのは、区間配置、そして特殊区間の5区、6区の出来が大きく影響するだろう。
さて、この両校に挑んでいく学校はどこか。先に挙げた順天堂大、中大、國學院大のエントリーは順当だ。主力選手にケガがあったり、調整が遅れていたとしても、とりあえず16人には入れていると見る。
なかでも注目されるのは、ふたりのスターだ。
順天堂大にはダイヤモンドリーグのファイナルの3000m障害で4位に入った三浦龍司(3年)、中大には前回の1区で中盤から集団を抜け出し、区間新記録をマークした吉居大和(3年)がいる。
ふたりが1区で激突することも考えられ、そうなれば高速のレース展開となる。そのとき、駒大と青学大はどう動くのか?駒大・大八木弘明監督、青学大・原監督も頭を悩ませていることだろう。
そして國學院大は、中西大翔(4年)、伊地知賢造(3年)、平林清澄、山本歩夢(ともに2年)と“4本柱”をそろえ、往路で真っ向勝負を挑む。
國學院大の前田監督、中大の藤原監督に話を聞くと、両者に共通していたのは、
「駒澤さん、青学さんには簡単に優勝はさせたくない」
という闘志だった。
往路で揺さぶりをかけ、主導権を握りたい。そしてそこで得られた経験が、2024年の第100回大会につながっていく――というストーリーを描いているようだ。
各大学の駆け引きは、もう始まっている。
取材・文●生島淳
【著者プロフィール】
いくしま・じゅん/1967年気仙沼生まれ。海外ではNBAやMLB、国内ではラグビー、駅伝、野球等、幅広くスポーツを追うジャーナリスト。駅伝関係の著書には『監督と大学駅伝』(日刊スポーツ出版社)、『箱根駅伝』『箱根駅伝 新ブランド校の時代』(ともに幻冬舎新書)、『箱根駅伝 勝利の方程式』『箱根駅伝 勝利の名言』 (ともに講談社+α文庫)など多数ある。
今回のエントリーで特徴的なのは、16人中9人が4年生ということ。しかし、そのなかに宮坂大器主将の名前がなかった。
宮坂は3年まで駅伝を走った経験がなかったが、人望が厚く、責任感も強い。そして、今年の全日本ではアンカーを任されたが、順位を落としてフィニッシュ。キャプテンが16人に入るかどうかは注目点のひとつだったが、原晋監督は実力者16人をそろえた。
キャプテンを外せるほどの陣容。層の厚さだけを比較するなら、駒大より、青学大の方が上かもしれない。
選手層が厚いということは、ブレーキが連鎖しないことを示す。つまり、想定通りの走りが出来ない区間があったとしても、次の区間で盛り返せるということだ。その「復元力」については、この2校が抜きんでている。
駒澤と青山学院。両校の雌雄を決するのは、区間配置、そして特殊区間の5区、6区の出来が大きく影響するだろう。
さて、この両校に挑んでいく学校はどこか。先に挙げた順天堂大、中大、國學院大のエントリーは順当だ。主力選手にケガがあったり、調整が遅れていたとしても、とりあえず16人には入れていると見る。
なかでも注目されるのは、ふたりのスターだ。
順天堂大にはダイヤモンドリーグのファイナルの3000m障害で4位に入った三浦龍司(3年)、中大には前回の1区で中盤から集団を抜け出し、区間新記録をマークした吉居大和(3年)がいる。
ふたりが1区で激突することも考えられ、そうなれば高速のレース展開となる。そのとき、駒大と青学大はどう動くのか?駒大・大八木弘明監督、青学大・原監督も頭を悩ませていることだろう。
そして國學院大は、中西大翔(4年)、伊地知賢造(3年)、平林清澄、山本歩夢(ともに2年)と“4本柱”をそろえ、往路で真っ向勝負を挑む。
國學院大の前田監督、中大の藤原監督に話を聞くと、両者に共通していたのは、
「駒澤さん、青学さんには簡単に優勝はさせたくない」
という闘志だった。
往路で揺さぶりをかけ、主導権を握りたい。そしてそこで得られた経験が、2024年の第100回大会につながっていく――というストーリーを描いているようだ。
各大学の駆け引きは、もう始まっている。
取材・文●生島淳
【著者プロフィール】
いくしま・じゅん/1967年気仙沼生まれ。海外ではNBAやMLB、国内ではラグビー、駅伝、野球等、幅広くスポーツを追うジャーナリスト。駅伝関係の著書には『監督と大学駅伝』(日刊スポーツ出版社)、『箱根駅伝』『箱根駅伝 新ブランド校の時代』(ともに幻冬舎新書)、『箱根駅伝 勝利の方程式』『箱根駅伝 勝利の名言』 (ともに講談社+α文庫)など多数ある。