「大事な試合だったので、勝ててホッとしています」と、謙虚に語った山沢だが、よりスケールアップした印象を与える今季の活躍を支えているのは、家族、とりわけ３歳になる長男の存在だという。
  「これまでは練習で上手く行かなかったりすると、性格的に考えすぎてしまうことが多かったんですが、無邪気に振る舞う子どもと接しているとリフレッシュできるし、自分ひとりのためにラグビーをやっているんじゃない、家族が見ていて楽しいラグビーをしようって、少し気楽に考えられるようになりましたね。ミスをしないように、ではなく、ミスも自分らしさのひとつとして、今は捉えられるんです」

　この日は前節の脳震とうの影響で欠場となった松田力也に代わって、２試合ぶりにFBからSOに回った山沢。無傷の10連勝で公式戦無敗記録も43にまで伸ばし、連覇へと突き進むワイルドナイツはもちろん、その松田をはじめ、コベルコ神戸スティーラーズの李承信、東芝ブレイブルーパス東京の中尾隼太、横浜キヤノンイーグルスの田村優など、SOの定位置争いが熾烈な日本代表においても、９月に控えるフランス・ワールドカップに向けて、ここからいっそう存在感を増していきそうだ。

「10番（SO）でも15番（FB）でも、自分に与えられた役割を果すだけです」

　家族の支えによって手に入れたメンタルの安定が、“ファンタジスタ”山沢のプレーにさらなる深みを与えていく。

取材・文●吉田治良
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