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ディープインパクトでもオルフェーヴルでもない...「日本競馬の史上最強馬」はイクイノックスだ!【天皇賞(秋)】

三好達彦

2023.10.31

 簡単にレースを振り返っておこう。

 予想どおりジャックドール(牡5歳/藤岡健一厩舎)がハナを切ると、ガイアフォース(牡4歳/栗東・杉山晴紀厩舎)がそれを追走。注目のイクイノックスも好スタートを切ると積極的に3番手につけ、ドウデュースはそれをマークするように4番手でレースを進めた。
 
 レースのペースは、前半1000mの通過が57秒7という速さ。本来なら前の2頭が後続を離して逃げる展開になるぐらいのハイペースだったが、イクイノックスは難なくその流れに乗って変わらず3番手を進み、ドウデュースもおっつけながら4番手を守って、馬群はその長さをぐっと縮めながら最終コーナーを回った。

 そして迎えた直線。

 ジャックドールとガイアフォースは懸命に粘るが、その外からイクイノックスが”馬なり”で並びかけ、交わしていく。一方のドウデュースはムチを入れられながら激しく追われるが、ずるずると位置を下げていく。

 ライバルの苦戦ぶりをよそに、イクイノックスは鞍上からゴーサインを出されると一気に後続を引き離して勝負の趨勢を決め、後方から追い込んだジャスティンパレスとプログノーシスに付け入る隙を与えることなく、着に2馬身半差をつけて、他馬との能力の違いを見せつけるような残酷さで圧勝を飾ったのだった。

 しかし、何という勝ち方だろう。ハイペースの流れを3番手で追走し、直線ではあっさりと抜け出して後続をぶっちぎる。今春、GⅠの大阪杯を逃げ切ったジャックドールが最下位に敗れ去ったように、逃げ・先行勢が総崩れとなる流れだったが、手綱をとったクリストフ・ルメールはレース後、「彼はスピードがあるから(追走は)ラクだった」というのだから、呆れてものも言えない。

 比較的新しいところでは、ディープインパクト、オルフェーヴルというような優駿が「史上最強か」とその名を挙げられたが、きのうの競馬を見た筆者は、「イクイノックスこそが日本競馬の史上最強馬」だと自信を持って言える。10月30日に東京競馬場でレースを見た人々は日本競馬に残る歴史的場面の目撃者となったのだ。

 しかし、血統とは不思議なものだ。

 サンデーサイレンスが日本の競走馬生産を世界レベルに引き上げた驚異のスーパーサイアーだったことはご存じだろう。その血脈が、彼の最良の後継種牡馬であるディープインパクトを通じてではなく、その全兄で競走成績がはるかに劣るブラックタイドがキタサンブラックという異能の名馬を産み出し、さらにはそのサイアーラインがイクイノックスに繋がっていくのだから、事実は小説より奇なり、と先人はよく言ったものだと思う。
 
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