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競馬

33年前、クラシック「三強」を形成したビワハヤヒデ 同期ライバルたちと高みを争った芦毛伝説【名馬列伝】

三好達彦

2026.02.14

 レースは力の入るものだった。ビワハヤヒデが2番手で流れに乗ると、ナリタタイシンは後方で脚を矯める。そして直線へ向いてビワハヤヒデが力強く抜け出して後続を突き放しにかかるところへナリタタイシンが猛追した。しかし、それも差を詰めるのみにとどまり、ビワハヤヒデは1馬身1/4差を付けてライバルを一蹴し、二つ目のGⅠタイトルを奪取。もはやかつての“三強”はビワハヤヒデの「一強時代」になったことを如実に表していた。

 天皇賞(春)を完勝したビワハヤヒデは宝塚記念(GⅠ)へ向かう。ここでも道中4番手から徐々に位置を押し上げて先頭へ。その後は後続をぶっちぎるワンサイドゲームとなり、ゴールでは2着のアイルトンシンボリに5馬身もの差を付けていた。末恐ろしいまでの強さだった。

 この春、弟のナリタブライアンは皐月賞、日本ダービーのクラシック二冠を圧勝。彼が菊花賞で三冠制覇を成し遂げた暁には、ジャパンカップか有馬記念で兄ビワハヤヒデとの兄弟対決が実現するのではないかという話題がファンの間で大きな盛り上がりを見せ始めていた。

 秋はオールカマー(GⅡ)から始動したビワハヤヒデは、ここが長期休養からの復帰戦となったウイニングチケットを1馬身3/4突き放して順調な滑り出しを見せた。

 そしてビワハヤヒデは春秋制覇がかかる秋の天皇賞(GⅠ)へ堂々と駒を進める。骨折で休養中のナリタタイシンは不在だったが、復帰戦をひと叩きされたウイニングチケットも無事に参戦。ビワハヤヒデが単勝オッズ1.5倍の1番人気、ウイニングチケットが5.0倍の2番人気となり、ともにゲートインした。
 
 しかしレースはあまりにも意外な結末を迎える。3番人気に推されたネーハイシーザーが2番手に付けると、ビワハヤヒデ、ウイニングチケットがその後ろにポジションを取る。馬群はその順列を守りながら直線へ向き、3頭の追い比べになるかと見えた。

 ところがウイニングチケットが早々に争いから脱落すると、ビワハヤヒデもいつものような伸びが見られずに坂上で振り切られ、ネーハイシーザーに勝利を譲ってしまった。結果、ビワハヤヒデは生涯で初めて連対を逃す5着に敗れ、ウイニングチケットも8着に沈んだ。ビワハヤヒデは入線後、鞍上の岡部が下馬し、馬運車に乗せられて馬場を去った。

 ウイニングチケットの屈腱炎発症の報が駆け巡った翌日、ビワハヤヒデも同じ病に襲われていたことが判明した。ビワハヤヒデは全治1年との診断を受け、陣営が協議した結果、引退・種牡馬入りとの発表がレースから3日後の11月2日に行なわれた。あまりにも突然の幕切れに誰もが呆然とするばかりだった。そして、菊花賞も圧勝して三冠馬となったナリタブライアンとの兄弟対決というファンの夢はこの瞬間に霧消した。

 春のGⅠレース2連勝が評価されたビワハヤヒデはJRA賞の最優秀5歳以上牡馬に選出。翌年の1月16日に京都競馬場で引退式が挙行され、ターフに別れを告げた。

 種牡馬としては大成しなかったビワハヤヒデは2005年に繁殖生活から引退。以降は功労馬として繋養先である日西牧場(北海道・日高町)で余勢を過ごし、2020年7月21日、天寿をまっとうし老衰で死んだ。

 一時は“シルバーコレクター”と揶揄されながらも、安定感に満ちた走りを続け、ついにはGⅠレース3勝という高みへ駆け上がったビワハヤヒデ。弟ナリタブライアンの名声に搔き消された感があるが、菊花賞以降に見せた大舞台での走りは王者に相応しいものだった。(文中敬称略)

文●三好達彦

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