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【名馬列伝】「変則二冠」の夢破れ、秋の大目標も失ったクロフネ。運命に導かれるように“砂の猛者”へ駆け上がった2つの衝撃レコード

三好達彦

2023.07.08

 武蔵野ステークスの興奮が冷めやらぬなか、迎えたのは第2回ジャパンカップダート(GⅠ、東京・ダート2100m)。GⅠタイトルを持つ米国調教馬リドパレスを抑え、クロフネが単勝オッズ1.7倍の1番人気に推された。

 ここでもまた彼は、常識外れとも言える快走を見せる。ゆったりとゲートを出たクロフネは後方集団の前目を追走。第3コーナー手前で鞍上が手綱を緩めると一気に位置を押し上げ、先頭に立って直線を迎えた。

 普通なら強引なレースぶりと非難されても仕方ない乗り方だが、鞍上の武豊はクロフネの並外れた能力に確固たる自信を持ち、あえて「早仕掛け」を試みたのである。先頭で直線へ向いたクロフネはみるみる他馬を突き放すと、2着に追い込んだ前年覇者であるウイングアローに7馬身(1秒1)の差を付けて楽勝。走破タイムはウイングアローが作った前年記録を一気に1秒3も更新するレコードだった。
 
 観衆の熱狂には凄まじいものがあった。誰もが翌年のドバイワールドカップを、ブリーダーズカップを走るクロフネの姿を思い浮かべながら心躍らせた。

 しかし、その夢は雲散霧消する。12月26日、陣営からクロフネが右前肢に屈腱炎を発症し、治療に長い期間を要するため現役を引退し、種牡馬入りすることが明かされた。

 クロフネは種牡馬としても成功を収め、フサイチリシャール、スリープレスナイト、カレンチャン、ホエールキャプチャ、クラリティスカイ、アエロリット、そして現役のソダシと、次々にGⅠホースを送り出した。そして、種牡馬としての活動を停止した1年後、2021年の1月17日、老衰のためこの世を去った。

 いまでは海外のダートで活躍する日本調教馬も現れているが、20年も前にそんな夢を抱かせてくれたのはクロフネだけだった。ダートを走ったわずか2戦で、これだけ強く深いインパクトを与えた馬はほかに知らない。(文中敬称略)

文●三好達彦

【動画】初砂で衝撃の強さ!クロフネの武蔵野Sをチェック

【動画】砂の猛者を一蹴!圧巻の強さを見せたクロフネのJCダート

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