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【名馬列伝】大差で突き放す異次元の強さ。“持込馬”であるマルゼンスキーが『史上最強』と主張される理由

三好達彦

2023.07.24

 前線のピンチを顧みた本郷は、これまで控えていた調教に関して中野渡に「(壊れたら)責任はおれが取るから、目一杯追ってみてくれ」と指示。これまでにない豪快さを見せたマルゼンスキーは、関東の2歳王者を決める朝日杯3歳ステークス(現・朝日杯フューチュリティステークス)で一段とランクアップした走りを見せる。

 ここでもスムーズに先頭を奪うと、後続との差を広げながら直線へ向き、前走で僅差の勝負になったヒシスピードをぐんぐんと引き離し、ゴールでは自身二度目の大差勝ち(2秒2差で、13馬身差と言われている)を収めたのだ。走破タイムの1分34秒4は、これまでの記録を0秒2更新するレースレコードだった。

 3歳初戦のオープンも楽勝したマルゼンスキーだが、そのあと軽度の骨折を負って3カ月間の休養に入ったものの、5月の復帰戦(オープン)も2着に7馬身差を付けて、力の違いを見せ付けた。
 
 その間に競馬シーンでは、ひとつの問題を巡って論争が繰り広げられた。マルゼンスキーは現在で言う持込馬だが、当時は持込馬も外国産馬と同じ扱いを受けており、日本ダービーを代表するクラシックはもちろん、天皇賞などの日本競馬の根幹をなす競走への出走が認められていなかったのだ。ファンはその事情は分かったうえで「マルゼンスキーの走りをダービーで見たい」とする声が多かった。

 その思いは関係者にとっても同じだった。もともと決まっていることだと分かってはいるが、無念な思いを胸に抱いていた。もはや、マルゼンスキーの出走が不可能と判断された日本ダービーの当週に残したとされる、騎手の中野渡のコメントはあまりにも痛切なことで知られる。

「ダービーに出させてほしい。枠順は大外でいい。ほかの馬の邪魔は一切しない。賞金もいらない。この馬の能力を確かめるだけで構わない」
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