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【名馬列伝】「変則二冠」の夢破れ、秋の大目標も失ったクロフネ。運命に導かれるように“砂の猛者”へ駆け上がった2つの衝撃レコード

三好達彦

2023.07.08

JCダートを制したクロフネ。砂キャリアわずか2戦目で頂点に立った。写真:産経新聞社

JCダートを制したクロフネ。砂キャリアわずか2戦目で頂点に立った。写真:産経新聞社

 芝とダート、両方でGⅠを制した芦毛のスーパーホース。そう説明するよりも、いまは「ソダシのお父さん」と言った方が通りがいいかもしれない。1998年に米国で生まれ、日本で競走、繁殖でともに大活躍したクロフネが今回のテーマである。

 クロフネの父は中堅種牡馬のフレンチデピュティ(のちに日本で繋養)の産駒で、米国のファシグティプトン・トレーニング・セールでノーザンファーム代表の吉田勝己が落札。日本へと輸入されたのち金子真人がオーナーとなり、1853年に浦賀を訪れて開国を迫ったペリー提督率いる船団の俗称にちなんで「クロフネ」と名付けられたと言われている。

 預託先は栗東トレーニング・センターの松田国英厩舎となり、2歳の10月にデビュー。初戦(京都・芝1600m)こそ取りこぼしたが、2戦目、俗に言う「折り返しの新馬戦」(京都・芝2000m)では3番手から楽々と抜け出して初勝利を挙げた。

 続くエリカ賞(500万下、阪神・芝2000m)も2着に3馬身半差を付けて快勝。重賞初挑戦となるラジオたんぱ杯3歳ステークス(GⅢ、阪神・芝2000m)は、アグネスタキオン、ジャングルポケットというのちにビッグレースを制することになる強豪を抑え、単勝オッズ1.4倍という圧倒的な支持を得たが、直線で伸びを欠いて前記2頭の後塵を拝し、3着として2000年シーズンを終えた。
 
 管骨溜の治療も含め、約3カ月の休養を経て心身ともに成長したクロフネは毎日杯(GⅢ、阪神・芝2000m)で戦線に復帰。2番手からあっさり抜け出すと、ほぼ「(手綱を)持ったまま」で2着を5馬身も千切り捨て、あらためてポテンシャルの高さを万人に見せつけた。

 ここで調教師の松田は、彼の持論に基づくクロフネのその後の異例なローテーション、NHKマイルカップ(GⅠ、東京・芝1600m)を経て日本ダービー(GⅠ、東京・芝2400m)を狙うというプランをぶち上げてファンを驚かせる。
 
 松田調教師いわく、「英国の2000ギニーはマイル、ダービーは2400ですから、まったく不思議なこととは思いません」と語る。「私は常々、預かった馬が引退して繁殖に上がる際の価値を考えているのですが、スピード化が進む現在、ダービーの2400だけではなく、マイルのGⅠを勝っていれば種牡馬の価値は断然高くなる。だからこそ、このローテーションを選択するのです」と意図を説明。のちに、このローテーションは「変則二冠」と呼ばれ、松田の看板戦略になっていく。
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