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海外サッカー

デ・ブライネを「遊軍」として起用するコンテ監督の狙い、ナポリが目指すべき到達点は――「いまはまだ、試行錯誤を重ねている段階」【現地発コラム】

片野道郎

2025.10.01

ミラン戦でナポリは、新加入選手のデ・ブライネ(前列右から2人目)、グティエレス(同3人目)、ホイルンド(後列右から3人目)、マリアヌッチ(後列左から2人目)を先発起用。(C)Alberto LINGRIA

ミラン戦でナポリは、新加入選手のデ・ブライネ(前列右から2人目)、グティエレス(同3人目)、ホイルンド(後列右から3人目)、マリアヌッチ(後列左から2人目)を先発起用。(C)Alberto LINGRIA

 開幕4連勝で首位に立ち、今シーズン最初のビッグマッチであるミラン戦。敵地サン・シーロに乗り込んだナポリだったが、開始31分で2点のリードを許したうえ、PKで1点差に迫り相手DFの退場で11人対10人になったラスト30分にもゴールを奪うことができず、初黒星を喫した。

 敵地での1-2の敗戦という結果そのものに関しては、2失点のいずれもが、最終ラインに故障者が相次いだために今シーズン初めて出場機会を得た若いCBルカ・マリアヌッチのミス絡みだったことなど、情状酌量の余地もないわけではない。

 しかし、それを差し引いたとしても、重要な新戦力を加えた新シーズンのチームの完成度という点で、対戦相手のミランと比べてやや遅れが見られることは否めなかった。それは、今シーズンの新戦力の目玉というべき2人のワールドクラス、ケビン・デ・ブライネとルカ・モドリッチをチームにどのように組み込み機能させるかという一点に、象徴的に表れていた。

 ナポリを率いて2年目のアントニオ・コンテ監督は、昨シーズンの優勝チームの構造に手を加える形で、デ・ブライネの居場所を作り出そうとしている。とは言っても、数字で表した基本システムそのものは、昨シーズンと実質的な変化はない。この試合でコンテがピッチに送り出した布陣は以下の通り。

ナポリ(4-1-4-1)
GK:メレト
DF:ディ・ロレンツォ、マリアヌッチ、ファン・ジェスス、グティエレス
DMF:ロボトカ
OMF:ポリターノ、アンギサ、マクトミネイ、デ・ブライネ
FW:ホイルンド

 昨シーズンと比べると、ジョバンニ・ディ・ロレンツォを除く最終ラインのレギュラー3人(アミル・ラフマニ、アレッサンドロ・ブオンジョルノ、マティアス・オリベラ)、そしてCFロメル・ルカクが故障欠場して控えと入れ替わっている以外、つまり本来レギュラーたるべきメンバーとして新しいのは、左サイドのデ・ブライネただ1人だ。昨シーズンはここに当初フビチャ・クバラツヘリアが入っていたが、冬の移籍マーケットでパリ・サンジェルマンに移籍。後半戦は左利きウイングのダビド・ネーレスが起用されていた。

 
 とはいえ、チームとしての組織的なメカニズムにおけるこのポジション(名目的には左ウイング)の役割は、昨シーズンとははっきりと異なっている。昨シーズンここでプレーしたクバラツヘリア、ネーレスが担った役割は、専らラスト30mの攻略に関わるものだった。ビルドアップ時には敵中盤ラインの背後で大外に開いて幅を取るか、あるいはやや内に入ってハーフスペースに位置するか、いずれにしてもボールのラインより上でパスの受け手となり、そこからゴールに向かって仕掛ける仕事が求められていた。

 しかし今シーズンのデ・ブライネは、ビルドアップ時には左サイドからアンカーのスタニスラフ・ロボトカと並ぶ低い位置まで下がり、最終ラインからパスを引き出して前方に展開する、いわば「第2のレジスタ」とでも言うべき機能を担っている。もちろん、そこからの展開でチームが敵陣に進出した後は、デ・ブライネも自由に前線に攻め上がって本来の持ち味である質の高いラストパスや高精度のシュートでフィニッシュにも絡んで行くことが想定されているはずで、実際に開幕からの4試合では、そうした動きをしばしば見せてフィニッシュにも絡んでいた。

 外野の見方からすると、デ・ブライネの持ち味を最大限に引き出そうとするならば、むしろ現在スコット・マクトミネイが担っているインサイドハーフとセカンドトップを足して二で割ったような役割を委ね、よりゴールに近いところで決定的な違いを作り出すことを期待する方がいいようにも思える。しかし誰にでも思いつきそうなこの解決策をコンテ監督が採用せず、より低い位置で起用する道を選んでいるとすれば、そこには相応の理由があるはずだ。

 おそらく指揮官は、昨シーズンに確立された攻撃のメカニズムにおいて、右サイドで幅を取ってそこから1対1突破やクロスで決定機を作り出すマッテオ・ポリターノ、積極的に2ライン(DFとMF)間に進出し、豊富な運動量で攻撃のボリュームを作り出すだけでなくプレス強度も高いアンドレ・アンギサ、CFと並ぶ最前線までポジションを上げて「ツインタワー」として機能しながらフィニッシュにも絡んでいく(そしてやはりプレス強度も高い)マクトミネイ、前線でDFを背負い縦パスを収めて攻撃の基準点となるルカクという4人が担う機能のいずれも、犠牲にしたくなかったのだろう。

 だとすれば、これらを維持したうえで、そこにデ・ブライネを組み込むために考案されたのが、ビルドアップ時にはレジスタ、ラスト30m攻略時には攻撃的MFとして、いわば「遊軍」的に機能する現在の役割である、ということになるだろうか。ピッチ上を広く動き回る自由を保証することによって、デ・ブライネが持ち味を発揮できる状況を自ら作り出すことが期待されているわけだ。

 
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