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【玉木正之のベースボール今昔物語:第21回】ドジャースも導入した日本式の“2人同時打撃練習"を最初にメジャーへ伝えた元最強助っ人との思い出<SLUGGER>

玉木正之

2025.12.29

大谷がワールドシリーズに備えて行っていた打撃練習。実は意外な日本からの影響があった。(C)Getty Images

大谷がワールドシリーズに備えて行っていた打撃練習。実は意外な日本からの影響があった。(C)Getty Images

 2025年のワールドシリーズ、ロサンゼルス・ドジャース対トロント・ブルージェイズの7連戦は、「史上最高の戦い」と断じてもいいほど素晴らしい試合の連続だった。

 シリーズMVPに選ばれた山本由伸、それに大谷翔平、佐々木朗希と3人のドジャースの日本人選手が大活躍したこともあり、日本でも話題沸騰。朝と昼のワイドショーや夕方と夜のニュース場組でも、各局がワールドシリーズの話題を取り上げ、「少しは日本シリーズも騒いであげてよ」と言いたくなったほどだった。

 しかし、それだけ騒がれたワールドシリーズのなかで、おそらく誰も注目しなかっただろうが、きわめて興味深いシーンが存在していた事実を紹介したい。

 それは第5戦を終え、ドジャースナインがトロントから専用機でロスに引き返した日の翌日、第6戦に備えて選手たちがドジャー・スタジアムでバッティング練習を始めた時のことだ。

 その様子を生中継で映し出したモーニングショーでは、現地のアナウンサーや日本のスタジオにいる出演者たちが、「大谷は打撃練習に出てくるでしょうか?」と騒いでいた。が、私はその時、マイクを手にしてフィールドに立っていたアナウンサーの背後に映し出された風景を見て、思わずニヤリと笑ってしまった。

 というのは、ホームプレートを挟んで、大きな緑色のネットのバッティング・ケージが、2つ並んで映し出されていたのだ。
 
「だからどうだって言うんだ?」と思うかもしれない。だが、メジャーリーグの各チームが、フィールドでバッティング練習をする時は、普通ホームプレートの周囲を一つのバッティングケージで囲み、打者1人、バッティング・ピッチャー1人で行うのが普通なのだ。

 NPBで常識的に見られる、2人同時にバッティング練習を行うのは、実は日本オリジナルなのだ。

 最近メジャーを取材している記者に聞いたところでは、いくつかの球団が日本式の打撃練習を取り入れているらしい(どれくらいのチームがやっているのか正確な数字は分からないが……)。

 これはおそらく、メジャーで活躍する日本人選手が増えたためだろう。しかし私は、メジャーで最初に“日本式2打者同時打撃練習”を取り入れた人物を知っている。

 それは、ヤクルトや近鉄で活躍した元助っ人のチャーリー・マニエルだ。

 1976年にドジャースから来日して6年間プレーし、通算189本塁打(本塁打王2回・打点王1回)。両チームの優勝にも大きく貢献したマニエルは、アメリカに帰って88~89年にインディアンス(現・ガーディアンズ)の打撃コーチを務めた。その時に日本式打撃練習を取り入れたのだ。
 
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