プロ野球

清宮幸太郎は3年目も村上宗隆に完敗。“ライバルの姿”が成長のヒントになるはず

新井裕貴(SLUGGER編集部)

2020.11.12

清宮(左)は今年も結果を残せず、村上(右)との差は広がるばかり。それでも手にした成長を飛躍につなげるヒントが村上にある。写真:産経ビジュアル(清宮)、徳原隆元(村上)

 もはや「清宮世代」から「村上世代」に変わった、と言っていいだろう。2017年ドラフトで高校からプロ入りした1999年組のことである。

 同年のドラフトは高校歴代最多本塁打を記録した早稲田実高の清宮幸太郎に、日本ハム、ロッテ、楽天、ソフトバンク、巨人、ヤクルト、阪神の7球団が競合し、日本ハムが指名権を獲得した。この時点での評価は圧倒的なものがあり、清宮はプロ1年目の二軍戦45試合で17本塁打と期待に応えてみせる。しかし一軍では、時折素晴らしい打撃を披露するものの、三振の山を築き、また1年目と2年目は故障が多く、もどかしさを感じさせた。

 その間、一気に台頭してきたのが、"清宮の外れ1位"でヤクルトに入団した村上宗隆だった。九州学院高では捕手だった村上だが守備に難があり、プロでは三塁へコンバート。すると持ち前の打撃の才能がどんどん開花し、高卒1年目にして二軍で両リーグ2位の17本塁打、OPS(出塁率+長打率).879と出色の成績を残す。終盤戦に昇格した一軍初打席でも神宮のライトスタンドに衝撃的なホームランを叩き込んだ。

 そして清宮が故障で開幕スタメンを逃す一方、村上は2年目に一軍のレギュラーに定着。10代選手として歴代最多の36本塁打&96打点、セ・リーグ歴代ワーストの184三振という豪快さも含めて"令和の怪童"らしい華々しい活躍を披露した。この時点では「ブンブン丸タイプ」で成長するかと思われたが、3年目の今季は「真の強打者」への道を拓く。
 
 球団日本人初の全試合4番打者を務め、打率.307、28本塁打、86打点。出塁率.427でタイトルを獲得しただけでなく、OPS1.012もリーグトップと球界最高の打者の一人にステップアップ。昨年に規定打席到達者のなかで両リーグワーストだった打率(.231)も一時は首位打者争いを演じたほどで、来年に東京五輪が開催されれば侍ジャパンの中軸に座っていても何ら不思議はない成長ぶりだった。

 一方、プロ入り時に栗山英樹監督が「東京五輪で4番を打っている」と期待を寄せた清宮は、今季96試合に出場して打率.190、7本塁打、22打点、得点圏打率.143、OPS.623。3年目もブレイクを果たすことができなかった。一番話題になったのが8月に代走起用され、プロ初盗塁を決めたことではないかと思えるほど、印象的な活躍がなかった。

 しかしそれでも、今季は「確かな成長」があった、と言いたい。

 確かに打撃成績はレギュラーとしても寂しい数字とはいえ、出塁率は初めて3割をクリア。「いやいや、しょうもない」と思われるかもしれないが、四球率は1年目の8.9%、2年目の7.6%ときて、今季はリーグ平均(9.6%)を上回る12.5%をマークし、課題の三振の多さも33.3%→27.0%→22.4%と着実に改善させている。特に2年連続で30%以上だったボール球スウィング率が20%近くまで抑えられており、3年目の今季は確実に選球眼が進歩していたのだ。
 
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