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大谷翔平の「四球攻め」は“差別”ではなく“必然”の選択。偉大すぎるゆえの苦しみ

新井裕貴(SLUGGER編集部)

2021.09.25

大谷と勝負しないことは差別なのか? そうとは思えない明確な理由があるように思える。(C)Getty Images

大谷と勝負しないことは差別なのか? そうとは思えない明確な理由があるように思える。(C)Getty Images

「アジア人にホームラン王を獲らせたくないんだ」「差別だ!」――3日連続で“四球攻め”にあっている大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)。あまりの勝負の避けられすぎに、一部ファンからはこんな声も出ている。

 現地時間9月22日のヒューストン・アストロズ戦では2つの申告敬遠もあって自己最多4四球、翌日の同カードは3四球、そして24日のシアトル・マリナーズ戦でも2つの敬遠を含む4打席連続四球となった。3試合スパンで10四球以上を記録したのは、過去50年間で3人だけ。2003年のバリー・ボンズ、2016年のブライス・ハーパー、そして今季の大谷である。

 大谷は現在、熾烈な本塁打王争いを演じている。6月29日にトップになって以降はずっとリードしていたものの、8月からややペースが鈍ると、9月中旬になってブラディミール・ゲレーロJr.(トロント・ブルージェイズ)とサルバドール・ペレス(カンザスシティ・ロイヤルズ)に抜かされ、現在は両者から1本差の45本の位置にいる。タイトル獲得に向けて1打席1打席が重要になってくる中での“敬遠祭り”。確かに嘆きたくなる気持ちも理解はできる。

 では、大谷は果たして「アジア人にタイトルを獲らせたくない」から勝負を避けられているのだろうか(ゲレーロJr.はドミニカ共和国、ペレスはベネズエラ出身の“外国籍”なのに……)。もちろん真意は分からない。けれども、ヒステリックにならずに冷静に状況を整理していくと、大谷への四球は、ある意味で当然の選択のように思えてくる。

【動画】アストロズもビビった!? 大谷翔平の豪快45号ホームラン
 
“敬遠祭り”が始まる前日、大谷は今季45号アーチを含むマルチ安打を放った。もっとも、試合は5対10で敗れており、20日の同カードは0対10で大敗。この2試合とも、大谷は4打数ずつ打席に立っていた。もしアストロズが端から大谷を避けたかったのであれば、この時点で四球攻めをしてもおかしくはないだろう。ではなぜしなかったのか。答えは簡単だ。ゲーム展開的に勝負できる余裕があったからだ。

 しかし、22日の試合は別だ。アストロズは初回に2点を先制したものの、6回まで3点しか取れなかった。さらにこの日の先発ルイス・ガルシアは、大谷に今季2本塁打を許しており、明らかに投げにくそうにもしていた。その中でエンジェルスは7回に逆転すると、アストロズはその後2打席を敬遠。しかし延長12回に4点を入れたことで、“気分よく”6打席目の大谷と勝負して三振を奪った。

 なぜアストロズがここまで勝利にこだわるのか。一部メディアからは「地区優勝が決定的なのに不可解」なる旨の記述がされていたが、なんら不可解ではない。21日の試合を終えた時点でアストロズは90勝61敗、地区2位に8ゲーム差をつけていた。しかし、彼らは地区優勝はもちろんのこと、狙っているのは「リーグ最高勝率」の座なのである。
 
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