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MLB

大谷翔平の「四球攻め」は“差別”ではなく“必然”の選択。偉大すぎるゆえの苦しみ

新井裕貴(SLUGGER編集部)

2021.09.25

MVP3回を誇る最強トラウトが5月17日に戦線離脱。大谷を“守って”くれる選手がいなくなった。(C)Getty Images

MVP3回を誇る最強トラウトが5月17日に戦線離脱。大谷を“守って”くれる選手がいなくなった。(C)Getty Images

 メジャーリーグのポストシーズンは、東中西の地区優勝チーム+ワイルドカード2枠で各リーグから5球団が進出できる。地区シリーズは5試合制、リーグ優勝決定シリーズとワールドシリーズは7試合制となっており、勝率の高いチームにホームアドバンテージ=本拠地で多く試合を行なう権利がある。

 果たして、21日の試合を終えた時点で、アストロズの勝率.596はタンパベイ・レイズ(東地区)の.612に次ぐリーグ2位。1試合レイズが多いものの、勝利数は3つの差があった。そして9月28日からレイズとの3連戦が組まれており、この時までに限りなく差を縮める、ないし離されてはいけない事情があったのだ。となれば、弱小エンジェルス相手に大事な白星を落とすことなどあってはならないのである。

 では、エンジェルスに勝つ簡単な方法は何か。もうお分かりだろう。「球界最高クラスの打者である大谷とまともに勝負しなければいい」である。

 大谷の後ろを打っているフィル・ゴスリンは今季96試合で7本塁打、OPS.697。はっきり言うと、よっぽど守備が良くない限りは強豪チームで中軸を打つことなどほぼあり得ない打力である。大谷に長打を打たれるリスクとゴスリン、ないし他のエンジェルス打者と比較した時、明らかに前者の方が危険度は高い。そう判断されているわけである。
 
 マリナーズが勝負を避けたのも、基本的には同じ理由だ。ただ、アストロズよりもこちらの方が“必死”になる事情もある。

 今季もマリナーズの下馬評は高くなかったが、意外な躍進を遂げ、珍しくこの時期までプレーオフ争いを演じている。最後にプレーオフに進出したのは、イチローの移籍1年目の2001年までさかのぼり、以降はほぼかすることもない。ブランク19年は現在ダントツのワースト記録であり、やはり彼らもとにかく勝ちに来ているのである。

 昨日も、大谷の四球がなぜ増えているのかについてデータ面から考察した。要約すると、本来は大谷の後ろを打っていたメジャー最強打者のマイク・トラウトが長期離脱してプロテクトできなくなったこと。そして、大谷自身もまたシーズンを通してボール球の見極めが改善しており、打者として成長したことが四球増加につながったと言及した。
 
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