プロ野球

実力以外の要素に大きく左右される打点の欠陥。“打撃三冠”で評価する時代は終わった?【野球の“常識”を疑え!第2回】<SLUGGER>

DELTA

2022.07.13

三冠王に向けてばく進中の村上。“令和の怪童”が凄いのは果たして「打点が多い」からなのだろうか。写真:徳原隆元

 今季はセ・リーグで村上宗隆(ヤクルト)、パ・リーグでは山川穂高(西武)が三冠王も視野に入る素晴らしい打棒を発揮している。「三冠」とはもちろん、打率・本塁打・打点のこと。テレビ中継などで選手の成績が紹介される時にも必ず目にする定番の指標だ。

 だが、この中でも特に打点は大きな欠陥があり、選手の実力を正当に評価するものとは言えない。今回は、打点で選手を評価することの問題点を改めて考えてみたい。

 野球にはさまざまなデータがあるが、それらは大きく2つのタイプに分けることができる。一つは「環境中立的」、もうひとつは「環境依存的」なデータだ。
 
 前者は周りの環境に左右されないことを指す。例えば本塁打を打った場合、チームが負けていようが、満塁弾だろうが、サヨナラアーチだろうが、等しく1本の本塁打として記録される。劇的な場面で打ったからといって2本、3本となったりはしない。このように本塁打は環境に左右されず記録される、打者個人の結果のみに焦点を当てたデータだ。他には、打率も「環境中立的データ」の代表例と言っていいだろう。

 一方、「環境依存的なデータ」の代表格が打点だ。同じ二塁打1本でも、塁上にいた走者が生還できなければ打点が記録されることはない。当然、走者がいない場面では本塁打を除いて記録されないし、走者の数によっても変わってくる。打席結果とは別に、環境によって大きく左右されるのだ。

 アウォード表彰をはじめとした選手の評価を行う際、より適切なのは「環境中立的なデータ」だ。「環境依存的なデータ」は、その選手の働きとは無縁の環境そのものを評価してしまうからである。選手個人の評価で考慮されるべきは本人の働きのみ。他人や環境の評価も含めるべきではないというのは、多くの人が同意するところではないだろうか。

【動画】怪物・村上宗隆が確信の一発! 完璧アーチを燕ファンに届ける
 
NEXT
PAGE
柳田悠岐と中田翔。タイトル獲得を分けた2人の環境