侍ジャパン

「正直4番を打ちたい」――悔しさを一打にぶつけた村上宗隆。試行錯誤を繰り返した若武者を救った大谷翔平の言葉【WBC】

THE DIGEST編集部

2023.03.08

左中間への特大アーチを放った村上(左)。4番を外された彼を前向きにさせたのは、大谷(右)の言葉だった。(C)Getty Images、写真:滝川敏之

 パンッ――。打った瞬間に本塁打だと確信する心地よい打球音が超満員の京セラドーム大阪に響き渡った。
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 これを放ったのは、村上宗隆(ヤクルト)だ。3月7日、京セラドーム大阪で行なわれたオリックスとの強化試合に「6番・三塁」で先発出場した23歳は、初回2死一、二塁の局面で左中間スタンドに着弾する3ランホームランを叩き込んだ。

「打った後の走り方を忘れていました。ちょっとホッとしました」

 そんなホームラン直後のコメントに、ここまでの苦しみが見えた。

 昨季にNPB史上最年少で三冠王に輝いた実力を買われ、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に挑む侍ジャパンでも村上は打線の核となる活躍を期待された。実際、今春の実戦では全5試合で4番として起用。栗山英樹監督のチームでは9試合連続での抜擢となっていた

 だが、村上の状態はなかなか上がり切らなかった。そして、打率.125(16打数2安打)、0本塁打、0打点と大ブレーキ。2日後に本大会の開幕が迫ったなかで本人は「焦りはない」「少しずつ良くなっている」と強調し続けたが、ついにオリックス戦で4番から外れた。レギュラーシーズンでも2019年9月28日の巨人戦以来の出来事だった。
 
 6番に変更された理由はさまざまにある。代わりに4番を務めた吉田正尚(ボストン・レッドソックス)の好調さや、大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)を中心とした打線のバランスなどだ。そして何より「メジャー組を上位で打たせて、打席を回したい」という栗山英樹監督の考えが出た形だった。

 無論、村上にもプライドはある。試合後の会見では「正直悔しかった気持ちはもちろんありますし、このチームで4番を打ちたい想いもある」と漏らした。これはプロの世界で長く4番を務め、ついには三冠王も掴んだ天才の隠し切れない本音と言えよう。

 本大会が差し迫るなかで悩みに悩んだ。そんな23歳の若武者を後ろ向きにさせなかったのは、チーム屈指のスターである大谷だった。試行錯誤の打席が続いたなかで「ナイススイング!」という一言が響いた。

「すごく前を向かせてもらえますし、すごくプラスな言葉をかけていただくので。『よし、次も頑張ろう』と思える」

 周囲の支えを得ながらようやく飛び出した一発。これによって村上は上向いていくのか。「必ず勝ちに導ける一打を打てると僕自身、思っている」と目をぎらつかせる23歳への楽しみは増すばかりだ。

文●羽澄凜太郎(THE DIGEST編集部)

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