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大谷をトレードで放出しないなら、今からでもがむしゃらに補強を目指すべき――エンジェルスに迫られる“最終決断”<SLUGGER>

ナガオ勝司

2023.07.17

トレード・デッドラインまであと2週間あまり。大谷はどのチームで今シーズンを終えるのだろうか?(C)Getty Images

「(プレーオフへの思いは)年々、強くはなっていますね、それは負ければ悔しいし、いけなかったら悔しいというのはその通りなので、優勝したことがない以上は優勝したいと思うのが自然かなとは思います」(オールスター前の共同会見)

 もし大谷翔平がエンジェルスのユニフォームを着て優勝したいのなら、今夏のトレード期限前にワールドシリーズ優勝を本気で狙う球団に移籍した方がいい。メジャー・リーグのフリー・エージェント制度は日本に比べれば随分と成熟しているので、エンジェルスと大谷の両方がポジティブに考えて、効率的に使えばいいだけの話なのだ。

 エンジェルスは前半戦終了時点で45勝46敗(勝率.495)で、アメリカン・リーグ西地区首位のレンジャーズから7ゲーム差の4位、3枠あるワイルドカード争いでも、首位ヤンキースから5ゲーム差の5位と離されている。

 おまけに、主砲のマイク・トラウトやアンソニー・レンドーンら、今年も主力選手が故障渦に飲み込まれている状況で「最後まで諦めるな」などと無責任なことは言えない。

 だから例えば、同じア・リーグのヤンキース、レッドソックス、そして、オールスターゲームの際、開催地シアトルのファンが、「Come to Seattle!」と大合唱をしたマリナーズに「一時的に」移籍して、そのチームのプレーオフ進出に貢献し、ワールドシリーズ優勝を狙ってほしい(ナショナル・リーグの有力球団を挙げなかったのは、他リーグへ移籍するとホームラン王や奪三振王を獲得できないからだ)。
 獲得球団にとっては「エース級投手」と「主砲級打者」の同時獲得になるのだ。どちらか片方を得るためだけでも数人の有望株を放出する価値があるし、ホームラン王と奪三振王のタイトルを同時獲得できる可能性がある「投打二刀流」には、有望株を一気に4、5人以上、放出しても獲得するだけの価値がある。

 21年夏、ドジャースはその「エース級投手」=マックス・シャーザーと、「首位打者級の打者」=トレイ・ターナー内野手を獲得するため、4人の有望株をナショナルズに差し出した。そのうち2人はすでにメジャーリーグに定着している。

 シャーザーはそのオフFAとなってメッツと契約し、結果的にはわずか数ヵ月の「レンタル移籍」となった。ターナーも昨季終了後FAとなってフィリーズへ去った。だが、ドジャースは21年はワイルドカードからナ・リーグ優勝決定戦まで勝ち上がり、昨季も地区優勝。ターナーは21年に首位打者に輝き、昨季はシルバースラッガーを受賞した。有望株を差し出してトレードに踏み切った成果はあったということだ。

 真夏のトレードはあくまで、ベースボール・ビジネスの一部である。たとえ、8月からの残り2ヵ月(+プレーオフ)という期間限定の「レンタル移籍」だったとしても、当該球団が「プレーオフ進出/ワールドチャンピオン達成のために最良の選択をした」だけのことなのだ。
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エンジェルスのプレーオフ進出可能性は今や3.1%?