高校野球

佐々木・真鍋・佐倉のビッグ3が注目される中で……履正社・森田大翔が2試合連続弾で世代最強スラッガーに名乗り【氏原英明が見た甲子園:8日目】<SLUGGER>

氏原英明

2023.08.14

大会前はビッグ3との評価には差があった森田(写真)だが、2試合連続アーチで急激な“追い上げ”を見せている。ドラフトの時には評価が逆転しているかもしれない。 写真:鈴木颯太朗(THE DIGEST写真部)

 たった一人、涼しくホームランを量産している。

「ランナーがいなかったんで、何としても出塁をしようと思って行った結果、良い打席になりました」

 履正社の森田大翔が、2試合連続のアーチをかけた。今大会のスラッガー・ビッグ3とされる佐々木麟太郎(花巻東)、真鍋慧(広陵)、佐倉峡史郎(九州国際大付)がインコース攻めに苦しむ中、淡々と結果を残して評価を上げている。

 1打席目に1死一、二塁のチャンスで右中間を破るタイムリー二塁打を放って勢いに乗ると、2打席目には左中間スタンドへ放り込んだのだ。ここまで今大会唯一の2戦連発で、この日は4打数3安打2打点とチームを牽引した。

「チャンスでの一本をずっと意識して練習でも取り組んできた。ランナーがいる状態での打席だったんで、なんとか1点をと思っていたので、点が入ってよかったです」
 
 佐々木らとはタイプは異なる。三塁手で苦手なコースが少ないスラッガー。力強く、そして柔らかさもある。「飛距離では絶対に勝てないので、確率の良いバッティング、勝負強いところを見せていきたい」と、ビッグ3にはちょっとしたライバル心をのぞかせている。

 この一年間は、大阪桐蔭のエース・前田悠伍を意識してきた。大阪で野球をやる以上は絶対に打ち崩さないといけない相手であり、それが森田の打者としてのレベルを上げてきた。

「ずっと練習から前田に対する意識を持って高くしてやってきたんで、それが生きていると思います。チームとして大阪予選で前田を打ち崩してかってきたので、より一層の自信がついたというのはあります」
 
 また、この春のセンバツでは初戦となった2回戦で敗退。この敗北もまた、森田や履正社を大きくしてきたファクターと言える。

 実は、センバツで高知高に敗退した夜、森田は人知れず多田晃監督の元を訪れている。「このままではいけない」と危機感を募らせ、1時間ほど、指揮官とヒザを突き合わせてチーム作りについて論議したのだった。

 それから、履正社は練習試合を多く組んだ。多田監督によれば、土日はもとより平日にも試合を組み、たくさんの経験を積んだという。強豪校との対戦も増やし、それらを大きな糧としたのだった。

 大阪桐蔭の前田を含めて、レベルの高い投手と対戦することによって対応力を身につけていったのだ。

 森田は言う。

「強豪校との試合経験は自分では大きかったですね。センバツでの反省があり、チャンスでの一本というのを大事にしてきた。練習からも常に実践を想定した練習ができてきたので、それが結果につながっていると思う」

 指揮官との議論は自らの意識改革にもつながっている。
 
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