ラプソードとは、ボールの弾道を測定して分析する機器だ。ピッチングにおいてはピッチャーの投球を可視化し、ボール球速から回転数、回転軸や変化量などを測定する。沖縄尚学ではラプソードを導入しているが、その数値を元に球種を見直したのが投手の成長と大きく関係していると比嘉監督はいう。
「新垣は軸足が沈み込まないタイプで上から投げるような感じになるので、カーブ、スライダーがバッターからすると上から降ってくるような軌道なんですね。それをラピソードで変化量などを見ても、かなり落下速度が大きいと言うのが分かりました。すごい縦に変化しているので、どこに落としたらいいと言うのが分かってくる。ラプソードを使うと、そういった球種を可視化してくれるところが良かったですね。本人の意識はスライダーを投げているとか、カーブとかそれぞれの投手には色々あるんですけど、ラプソードで見るとあまり変わらなかったり。じゃ、ひとつ球種を削って、こっちの方をやってみたらどうかって話ができるんで、非常に大きかったですね」
昨今の野球界はデータサイエンスの波を受けて使用する人によっては大きな変革をすることができる。昨夏の甲子園でも2回戦で優勝候補の健大高崎を破った智弁学園のエース・田近楓雅は3種類のチェンジアップを投げたが、彼もラプソードの存在が自分のピッチングを変えたとも語っており、投手は新しい時代を迎えたと言える。
「基本的に自分はどの試合もエースから起用していくという使い方をしていた。逆にそれが大会の中盤から終盤の戦いにおいては勝ちきれない戦い方になっていると言うのは感じていたので、どんどん積極的に新垣使うということを、沖縄県大会のころから意識はしていました」
大会後に発表されたU-18日本代表に2年生で選出されたエースの末吉は誰もが知るところの存在だった。しかし、大会を勝ち抜くには他の投手も必要で、そうした投手育成の中でキーを握ったのが新垣で、ラプソードを駆使して成長を見せたと言うのはなんとも新時代の到来を予感させる。
「改めてエース頼みではいけないことを学んだ大会でした」
今大会の大きな鍵を握った新垣の縦のスライダーはそうして生まれた。沖縄尚学を夏初制覇に導いたのだった。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも
開設している。
【記事】3点差でもセーフティリードにあらず。相次ぐ逆転劇で感じた甲子園の怖さ<SLUGGER>
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昨今の野球界はデータサイエンスの波を受けて使用する人によっては大きな変革をすることができる。昨夏の甲子園でも2回戦で優勝候補の健大高崎を破った智弁学園のエース・田近楓雅は3種類のチェンジアップを投げたが、彼もラプソードの存在が自分のピッチングを変えたとも語っており、投手は新しい時代を迎えたと言える。
「基本的に自分はどの試合もエースから起用していくという使い方をしていた。逆にそれが大会の中盤から終盤の戦いにおいては勝ちきれない戦い方になっていると言うのは感じていたので、どんどん積極的に新垣使うということを、沖縄県大会のころから意識はしていました」
大会後に発表されたU-18日本代表に2年生で選出されたエースの末吉は誰もが知るところの存在だった。しかし、大会を勝ち抜くには他の投手も必要で、そうした投手育成の中でキーを握ったのが新垣で、ラプソードを駆使して成長を見せたと言うのはなんとも新時代の到来を予感させる。
「改めてエース頼みではいけないことを学んだ大会でした」
今大会の大きな鍵を握った新垣の縦のスライダーはそうして生まれた。沖縄尚学を夏初制覇に導いたのだった。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも
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