森下は言う。
「エラーした後、(木浪)聖也さんや熊谷(敬宥)さん、いろんな人が声をかけてくれて 『お前も声を出しておけば、必ずチャンスで回ってくるから』と言ってもらえて(声を出していたら)、本当にチャンスに来たので集中して打席に入りました。 エラーしたところに打席が回ってくるというのも野球の一つ。本当に回ってきたなという感じでしたね」
ミスとは7回表のことだ。
1点ビハインドの展開で2死一塁、マウンドの島本浩也は森友哉をセカンドゴロに打ち取ったが、これを二塁手の中野拓夢がファンブル。森下の前へと転がってきた。一塁走者の宗佑磨はすでに三塁へ到達。森下は素手で捕球しようとして握り損ね、宗のホーム生還を許してしまったのだ。失敗を取り返す意味でも、集中力が高まっていた。
打たなければいけない場面で異常なほどに集中し、狙い球が頭に入っていた。
あの一打はその中で生まれていたのだ。
チームに1勝をもたらしただけではなく、オリックスのリリーバー陣に攻め手を無くさせるという意味でも大きな一打だったと言えるだろう。第3戦は反撃を食い止められたインコースのフォークを3、4番が脅威の集中力で対処した。これが、この後のシリーズの対戦で、勝負のあやとなってくるのは間違いない。もう一度、オリックスバッテリーは同じ攻めをしてくるのか、それとも、新しい手を見せてくるのか。これは日本シリーズの醍醐味というものだ。
ただ、この日のオリックスのブルペン陣が苦しかったのも事実だ。
宇田川は3連投だった。レギュラーシーズンでのオリックスは、移動日を挟んでも3連投をしないチームだったが、この日はチーム事情から宇田川の登板を余儀なくされた。宇田川も、厚沢和幸ブルペンコーチも疲労は否定したが、今日の移動日を挟んで、コンディションが回復した時に、ブルペン運用をどう組むかはシリーズの最終決戦で物を言うかもしれない。
厚沢コーチは言う。
「3連投をすることが難しいのではなく、コンディションにリスクがあるからシーズン中はやらないだけ。宇田川もリリーフのスペシャリストとして何回もチームを救ってくれている。こちらもキャッチボールを何回もした後に、行けるという判断をした上での起用なので、まったく問題ない。
キャッチャーの要求通りに投げられなかったところもありますけど、それはシーズン中もあることで、3連投だから影響しているかは分からないですよね。甲子園の雰囲気の中、交流戦とはまた違ったものがありました。すごかったですけど、僕らはいつも通りやっている中で相手が上回っていると思っているので、また明後日、最強のリリーフ陣を出しますよ」
一方、3試合連続打点の森下も気持ちを昂らせる。
「打点にはシーズン始まる前からこだわってきていたので、こういう日本シリーズの短期決戦でチームに勝ちをもたらせたのは良かったと思います。欲を出したら相手に飲まれると思うので、欲は出さず、相手はどの投手か分からないですけど、絶対にいいピッチャーなので、基本に忠実に一戦必勝でやっていきたいと思います」
第6戦、オリックスはエース・山本由伸を立ててくるだろう。あるいは左腕の宮城大弥もいる。移動日を挟んだことで、リリーフ陣のコンディションも回復してくるだろう。
投手と打者によるインコースのフォークをめぐる争い。
最後まで目が離せないせめぎ合いになりそうだ。
文●氏原英明
【著者プロフィール】うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『SLUGGER』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設。このほど、パ・リーグ特化のWEBマガジン「PLジャーナル限界突パ」を創刊した。
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「エラーした後、(木浪)聖也さんや熊谷(敬宥)さん、いろんな人が声をかけてくれて 『お前も声を出しておけば、必ずチャンスで回ってくるから』と言ってもらえて(声を出していたら)、本当にチャンスに来たので集中して打席に入りました。 エラーしたところに打席が回ってくるというのも野球の一つ。本当に回ってきたなという感じでしたね」
ミスとは7回表のことだ。
1点ビハインドの展開で2死一塁、マウンドの島本浩也は森友哉をセカンドゴロに打ち取ったが、これを二塁手の中野拓夢がファンブル。森下の前へと転がってきた。一塁走者の宗佑磨はすでに三塁へ到達。森下は素手で捕球しようとして握り損ね、宗のホーム生還を許してしまったのだ。失敗を取り返す意味でも、集中力が高まっていた。
打たなければいけない場面で異常なほどに集中し、狙い球が頭に入っていた。
あの一打はその中で生まれていたのだ。
チームに1勝をもたらしただけではなく、オリックスのリリーバー陣に攻め手を無くさせるという意味でも大きな一打だったと言えるだろう。第3戦は反撃を食い止められたインコースのフォークを3、4番が脅威の集中力で対処した。これが、この後のシリーズの対戦で、勝負のあやとなってくるのは間違いない。もう一度、オリックスバッテリーは同じ攻めをしてくるのか、それとも、新しい手を見せてくるのか。これは日本シリーズの醍醐味というものだ。
ただ、この日のオリックスのブルペン陣が苦しかったのも事実だ。
宇田川は3連投だった。レギュラーシーズンでのオリックスは、移動日を挟んでも3連投をしないチームだったが、この日はチーム事情から宇田川の登板を余儀なくされた。宇田川も、厚沢和幸ブルペンコーチも疲労は否定したが、今日の移動日を挟んで、コンディションが回復した時に、ブルペン運用をどう組むかはシリーズの最終決戦で物を言うかもしれない。
厚沢コーチは言う。
「3連投をすることが難しいのではなく、コンディションにリスクがあるからシーズン中はやらないだけ。宇田川もリリーフのスペシャリストとして何回もチームを救ってくれている。こちらもキャッチボールを何回もした後に、行けるという判断をした上での起用なので、まったく問題ない。
キャッチャーの要求通りに投げられなかったところもありますけど、それはシーズン中もあることで、3連投だから影響しているかは分からないですよね。甲子園の雰囲気の中、交流戦とはまた違ったものがありました。すごかったですけど、僕らはいつも通りやっている中で相手が上回っていると思っているので、また明後日、最強のリリーフ陣を出しますよ」
一方、3試合連続打点の森下も気持ちを昂らせる。
「打点にはシーズン始まる前からこだわってきていたので、こういう日本シリーズの短期決戦でチームに勝ちをもたらせたのは良かったと思います。欲を出したら相手に飲まれると思うので、欲は出さず、相手はどの投手か分からないですけど、絶対にいいピッチャーなので、基本に忠実に一戦必勝でやっていきたいと思います」
第6戦、オリックスはエース・山本由伸を立ててくるだろう。あるいは左腕の宮城大弥もいる。移動日を挟んだことで、リリーフ陣のコンディションも回復してくるだろう。
投手と打者によるインコースのフォークをめぐる争い。
最後まで目が離せないせめぎ合いになりそうだ。
文●氏原英明
【著者プロフィール】うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『SLUGGER』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設。このほど、パ・リーグ特化のWEBマガジン「PLジャーナル限界突パ」を創刊した。
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