投げる側の方では、甲斐野央が「僕はボール自体が綺麗な球ではないのが持ち味。だから、フォークでもいろんな落ち方をするんですけど、それを生かしながら、とにかく、思い切る腕を振って落ちてくれと思っています」と語る一方、石川柊は自身の新たなる変化について語っている。
「速い変化球は、自分の武器にしていかなくちゃいけないと考えてきました。(もともとの持ち球である)カーブを意識させることで、まっすぐをより速く見せる。その中で速い変化球を使うことができれば、ピッチングが楽になる。幅を支えるピッチングになるのかなと思います」
もっとも、そうした「勝つ投手」の共通した特徴は、日本シリーズの後に行われた『プレミア12』の日本代表選手たちにも共通していた。特に勝利の方程式を任された山本由伸(オリックス)、前出の甲斐野、そして、山崎康晃(DeNA)は意識的にストレートに近い球速の球種を操ることで、打者を封じ込んでいた。
山本は小林の言葉にもあった「軌道」を口にする。
「僕はフォークを投げる時、ストレートの軌道に乗っかかるようにするというイメージを常に持っています。いいバッターになればなるほど、小さなブレを見逃さない。軌道から少しずれるだけで全然、振ってくれないと感じていて、意識しているところではあります」
かつて、日本の多くの好打者たちは、足を大きく上げて、ポイントを前目に置いていた。だから、そういう打者を封じるために、投手は緩急さを使って攻めていくのが常套手段とされてきた。
しかし、昨今の好打者たちは、侍ジャパンの4番を務めた筒香嘉智(DeNA)や鈴木誠也(広島)に代表されるように、ポイントを後ろ目にしている選手が多い。さらには、「2ストライクアプローチ」と言って、追い込まれてからバッティングスタイルを変えてくる選手も少なくない。
そういった打者たちを抑え込んでいくためには、従来の「緩急さ」だけではなく、ストレートに近い球種を使うことが必要とされ、なおかつ、ピッチトンネルを構成しながら速球との軌道の違いを抑えていくことが求めらている。
投球データを駆使した論述や投球データとバイオメカニクスの両面から投球スタイルを洗い直し、成功につなげている選手も多くなっているとも聞く。日々、野球は進化しているのだ。
日本シリーズという舞台は、「トレンド」の映し鏡でもある。今の日本の野球がどこに向かっているのか、最先端ものを明示する場所でもある。
そのシーンに巡り合えた喜び。これは至福の瞬間だろう。
2020年にはどんな驚きが待っているのだろうか。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。
「速い変化球は、自分の武器にしていかなくちゃいけないと考えてきました。(もともとの持ち球である)カーブを意識させることで、まっすぐをより速く見せる。その中で速い変化球を使うことができれば、ピッチングが楽になる。幅を支えるピッチングになるのかなと思います」
もっとも、そうした「勝つ投手」の共通した特徴は、日本シリーズの後に行われた『プレミア12』の日本代表選手たちにも共通していた。特に勝利の方程式を任された山本由伸(オリックス)、前出の甲斐野、そして、山崎康晃(DeNA)は意識的にストレートに近い球速の球種を操ることで、打者を封じ込んでいた。
山本は小林の言葉にもあった「軌道」を口にする。
「僕はフォークを投げる時、ストレートの軌道に乗っかかるようにするというイメージを常に持っています。いいバッターになればなるほど、小さなブレを見逃さない。軌道から少しずれるだけで全然、振ってくれないと感じていて、意識しているところではあります」
かつて、日本の多くの好打者たちは、足を大きく上げて、ポイントを前目に置いていた。だから、そういう打者を封じるために、投手は緩急さを使って攻めていくのが常套手段とされてきた。
しかし、昨今の好打者たちは、侍ジャパンの4番を務めた筒香嘉智(DeNA)や鈴木誠也(広島)に代表されるように、ポイントを後ろ目にしている選手が多い。さらには、「2ストライクアプローチ」と言って、追い込まれてからバッティングスタイルを変えてくる選手も少なくない。
そういった打者たちを抑え込んでいくためには、従来の「緩急さ」だけではなく、ストレートに近い球種を使うことが必要とされ、なおかつ、ピッチトンネルを構成しながら速球との軌道の違いを抑えていくことが求めらている。
投球データを駆使した論述や投球データとバイオメカニクスの両面から投球スタイルを洗い直し、成功につなげている選手も多くなっているとも聞く。日々、野球は進化しているのだ。
日本シリーズという舞台は、「トレンド」の映し鏡でもある。今の日本の野球がどこに向かっているのか、最先端ものを明示する場所でもある。
そのシーンに巡り合えた喜び。これは至福の瞬間だろう。
2020年にはどんな驚きが待っているのだろうか。
取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト)
【著者プロフィール】
うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園という病』(新潮社)、『メジャーをかなえた雄星ノート』(文藝春秋社)では監修を務めた。