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MLB

険しいトミー・ジョン手術からの復活の道のり。大谷が目指すべきは“上位入賞”ではなく“完走”

出野哲也

2020.07.28

 レイズでムーアとチームメイトだったアレックス・カッブ(現オリオールズ)も似たような道を辿っている。13~14年は2年続けて防御率2点台と実績を積んでいたが、15年は5月に手術をして全休。16年9月に復帰して5試合投げ、完全復活した17年は自己最多の179.1イニングを投げて12勝、防御率3.66。一見悪くはなさそうだが、14年に8.06だった奪三振率は6.42まで下降し、オリオールズへ移籍した18年以降は不振が続いている。

 大谷がこれまで紹介した投手の中でどの例に当てはまるかは、当然ながら今の時点では判定できない。好材料なのはまだ25歳と若いことで、成功例のフェルナンデスとストラスバーグはTJ手術を受けた時に22歳、ハービーは24歳だった。ムーアも25歳だったから保証の限りではないけれども、若ければそれだけ回復は早く、復帰後のキャリアも長くなる。

 だが、すでに述べたように新しい投球フォームになったこともあり、今季は「路上教習」の段階。いきなりスロットル全開で走り出すような危険な真似は禁物だ。
 
 大谷が本来持っている才能からすれば、快刀乱麻を断つピッチングをファンはどうしても期待してしまう。だからこそ、26日の登板のように打ち込まれた場合、メディアや解説者が批判の矛先を向けるのは目に見えていたことだ。

 けれども、ここまで振り返ってみて分かるように、トミー・ジョン手術からの復活は決して簡単なものではない。再度の故障に見舞われることなく、球団が設定したプラン通りに最後までローテーションを守り通せるならば、数字的に多少物足りなかったとしても今シーズンに関しては“合格”と見なしていいのではないか。

 そもそも、大谷が年間を通じて先発投手として投げたのは、日本時代の15年が最後(MVPとなった16年も夏場にローテーションを外れていた)で、もう5年も前のこと。20年の大谷が目指すべきは、マラソンでたとえるなら上位入賞ではなく「完走」なのだ。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『プロ野球 埋もれたMVPを発掘する本』『メジャー・リーグ球団史』(いずれも言視舎)。

※『SLUGGER』2020年5月号より加筆修正のうえ、転載

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