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NBA

“マジックに守備の秘訣を伝授した男”マイケル・クーパー。歩行すら困難だった少年が、レイカーズの主力となるまでの軌跡【NBA名脇役列伝・前編】

出野哲也

2020.09.07

少年時代は歩行すら困難だったクーパーだが、たゆまぬ努力でレイカーズの主力を務めるまでに成長した。(C)Getty Images

少年時代は歩行すら困難だったクーパーだが、たゆまぬ努力でレイカーズの主力を務めるまでに成長した。(C)Getty Images

 2014年7月、マイケル・クーパーが舌ガンを患っているとのニュースが流れた。幸いにも初期の段階であり、手術で完治するとのことだったが、Twitterではカリーム・アブドゥル・ジャバーやマジック・ジョンソンら、ロサンゼルス・レイカーズ時代のチームメイトたちから、旧友の身を案ずるメッセージが相次いで寄せられていた。

 もちろんレイカーズのファンも、心配する気持ちは彼らと変わらなかっただろう。1980年代のNBAを席巻した“ショータイム・レイカーズ”を知る者にとって、“クープ”はジャバーやマジックと同じように、特別な感情を呼び起こす選手の1人なのだから。
 
■100針を縫う大ケガを負い、幼少期は辛い思いを味わう

 ロサンゼルス近郊のパサディナで生まれたクーパーは、5歳の時に左足に大ケガを負う。つまずいて傍にあったコーヒー缶の縁で足を切り──傷は骨にまで達した──、実に100針も縫う大手術を受けたのだ。担当医からは「まともに歩けるようになるとは考えないでください。まして走ったり跳んだりなど論外です」と言い渡されたという。

 それから3年間は歩行補助器の助けを借り、ほかの子どもたちが学校の校庭で遊んでいる姿を窓辺で眺めながら過ごす日々が続く。やがて普通の運動ができるまでに回復すると、ニグロリーグの選手だった叔父の勧めで野球を始めたが、ボールが怖くて断念。フットボールからも最初の試合で頭を強打したことを理由に遠ざかり、そうして最後に辿り着いたのがバスケットボールだった。

 高校2年まではさほど目立つ選手ではなかったが、コーチのジョージ・タージアンの指導によって運命が大きく変わる。

「最終学年になってめきめきと腕を上げてきた。素直に言われたことを聞くから、試合を重ねるごとに上達していったよ。特に守備が素晴らしく、最高のチームプレーヤーだったね」(タージアン)

 ディフェンスを鍛えるために、自ら身長7フィート(213cm)の木製人形を作り、それを相手に見立てて練習をしたこともあったという。幼い頃に両親が離婚していたクーパーにとって、タージアンは父親代わりの存在でもあった。
 
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