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NBA

消えない傷を負ったモスクワ五輪の“幻のアメリカ代表”「スポーツと政治は無関係」の理念が踏みにじられる大会に【五輪史探訪】<DUNKSHOOT>

出野哲也

2021.07.05

トーマス(左)、ブラックマン(右下)らが集結したモスクワ五輪のアメリカ代表だが、政治的理由で不参加に。アグワイア(右上)は「今もその傷は癒えていない」と語る。(C)Getty Images

トーマス(左)、ブラックマン(右下)らが集結したモスクワ五輪のアメリカ代表だが、政治的理由で不参加に。アグワイア(右上)は「今もその傷は癒えていない」と語る。(C)Getty Images

 新型コロナウイルスの蔓延で2020年に開催予定だった東京五輪は1年後に延期となったが、過去には政治的な問題で大会に出場できなかった悲運の選手たちもいた。1980年、モスクワ五輪の“幻のアメリカ代表”。メンバーの1人が「今も傷は癒えていない」と語ったように、彼らは他国同士の無関係な揉め事に巻き込まれ、国を背負って戦う一世一代のチャンスを奪われてしまったのだ。

■政治的な問題に巻き込まれ、アメリカは大会不参加に

 世界中に広がった新型コロナウイルスの影響により、2020年7月から開催される予定だった東京オリンピックは1年延期された。異例の事態ではあるものの、少なくとも中止という最悪の事態は回避。コロナ禍はいまだ完全な終息に至ってはいないが、どうにかここ日本で、アメリカ代表をはじめとする世界各国のバスケットボール選手たちのスーパープレーを目撃できる日が近づいている。
 
 しかしながら、過去には政治的ないざこざにより国家が大会をボイコットしたために、オリンピックを経験できなかった悲運の選手たちもいた。1979年、ソビエト連邦(ソ連)がアフガニスタンの親共産政権を支援する目的で同国へ軍隊を送り込んだことに、アメリカを筆頭とする西側諸国が反発。ジミー・カーター米大統領は、翌1980年にモスクワで開催予定だった五輪への不参加を各国に呼びかけた。

 ニューヨーク州レークプラシッドで行なわれた冬季オリンピック終了後の4月12日、アメリカは史上初の五輪ボイコットを正式決定する。カナダや西ドイツなどの親米国や、ソ連との関係が悪化していた中国、そして日本もその動きに追随。65もの国と地域が参加を見送ったことで、最終的な参加国は80にとどまり「スポーツと政治は無関係」との理念は踏みにじられた。

「ロシア(ソ連)とアフガニスタンの揉め事に、何で俺たちが巻き込まれなくちゃならないんだ。ロシアがアメリカに攻め込んできたなら話は別だけど。まったく理解できなかった」
 
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