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優勝候補ヒートの新キーマンだ! 「どん底まで落ちた」オラディポの復活への道のり「今ではどんなことでも乗り越えられる」<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2022.04.29

近年はケガに悩まされてきたオラディポだが、プレーオフ第5戦で躍動。1回戦突破の立役者となった。(C)Getty Images

 イースタン・カンファレンス第1シードのマイアミ・ヒートは、アトランタ・ホークスとのプレーオフ1回戦を4勝1敗で制し、カンファレンス・セミファイナル進出を決めた。

 この勝負を決めたのが、第5戦でチームハイの23得点をあげた元オールスターのヴィクター・オラディポだ。

 オラディポは昨年3月、ヒューストン・ロケッツからトレードで加入。スターターとして4試合をプレーしたところで、2019年に手術した右大腿四頭筋のケガが再発。プレーオフを待たずにシーズンを終えていた。よって、今回がヒートで迎える初のプレーオフだった。

 昨年5月13日に受けた手術は成功し、当初は11月頃には復帰可能と言われていたが、今季初めてコートに立ったのは3月7日、古巣のロケッツ戦だった。

 その後は散発的な出場ながら徐々にプレータイムを伸ばし、レギュラーシーズン最終戦で今季初先発すると、4シーズンぶりの40得点に10リバウンドのダブルダブルを記録。プレーオフでは第3戦でカイル・ラウリーが負傷、さらにジミー・バトラーもヒザを痛めて5戦目を欠場することになると、エリック・スポールストラHC(ヘッドコーチ)は、オラディポを第4戦ではベンチから、そして第5戦ではスターターで起用したのだった。
 
 シリーズ突破がかかった第5戦、オラディポは序盤から連続得点を奪うと、第2クォーター中盤の競った場面でも、チームにとってこの最初の3ポイントを決める殊勲のプレー。得点以外にも、相手の流れを断ち切るスティールや、絶妙なアシストで好機を演出するなど、MVP級の活躍を披露した。

 自身でも納得のパフォーマンスだったのだろう。試合終了のブザーが鳴ると、オラディポは観客席に向かって、熱い想いを吐き出すかのように咆哮した。

「1年前、僕は次の手術を待っていた。1年前の今日、ほぼ同じ時間に、1人暗闇の中で壊れそうになっていたのを覚えているよ。それは諦めたからじゃなく、どん底まで落ちたことを実感していたから。僕には2つの選択肢しかなかった。やめるか、続けるか。そして僕は、続けることを選んだんだ」

 試合後、オラディポの先発起用を決断したスポールストラHCも、「この3年間、ケガや挫折と向き合いながら歩んできた彼を、私は本当に尊敬している。我々は皆、彼の活躍をとても嬉しく思っている。今夜の彼は本当に素晴らしかった。まさに、我らの一員たるパフォーマンスだったよ!」と、不屈のヒーローを労った。
 
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