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重病に倒れたモーニングを支えたハーダウェイ。兄弟愛にも似た熱い友情を築いた2人【NBAデュオ列伝|後編】<DUNKSHOOT>

出野哲也

2022.05.19

コンビでの優勝は叶わなかったが、熱いプレーでファンを魅了したハーダウェイとモーニング。両者の背番号はヒートの欠番となっている。(C)Getty Images

■天敵ニックスと血で血を洗う激しい肉弾バトルを展開

 ヒートのハーダウェイ獲得の成果は、早くもライリー就任2年目の96-97シーズンに現われた。球団記録の61勝でアトランティック・ディビジョンを制覇。プレーオフでもオーランド・マジックとニューヨーク・ニックスを撃破し、カンファレンス決勝で王者シカゴ・ブルズに敗れたものの、一躍リーグの強豪チームとして認められる存在になった。

 快進撃の原動力となったのが、ケガの後遺症から解放されたハーダウェイだった。平均20.3点、8.6アシストとほぼ全盛期に近い数字を残しただけでなく、ここ一番での勝負強さも際立っていた。

 殿堂入りの名コーチ、ジャック・ラムジーは、「マイケル・ジョーダンを別にすれば、ハーダウェイこそリーグ最高のクラッチプレーヤー」と称賛した。

 もうひとつ見逃せないのが、他球団から移籍した選手ばかりで構成された寄せ集めチームを統率した点だった。

「ティムはリーダーとしての役割を完璧にこなしてくれた。彼以外に、私が自分のチームに欲しいと思うポイントガードはいない。チームのMVPだけでなく、リーグ全体のMVPでもおかしくない」とライリーは断言した。

 実際、MVP投票では4位にランクされ、初めてオールNBA1チームにも選出されるなど、ライリーの評価は決して身びいきではなかった。
 
「チームメイトになるまで、ティムがこれほど素晴らしい選手だとは思っていなかった。彼のような選手がいて俺たちは幸運だよ」

 モーニングもハーダウェイの存在感を認めていたが、彼自身はやや壁にぶつかっていた。攻撃のバリエーションが限られていること、しばしば不注意なミスをすること、故障が多いこと。そして何より、感情を抑制できずにファウルトラブルに陥る悪癖など、克服すべき課題が山積みだった。

「アロンゾも冷静にプレーすることの大切さはわかっているんだが、試合になるとどうしても熱い部分が頭をもたげてくるようだ」とライリーも頭を悩ませた。

 そして、この欠点が最悪の形で出てしまったのが、97-98シーズンのプレーオフ1回戦、対ニックス第4戦だった。

 ライリーはヒートに移る直前まで、ニックスのHCを務めていた。お互いに激しいディフェンスを売りとする両チームの対戦は常に白熱し、前年のプレーオフではヒートのPJ・ブラウンがニックスのチャーリー・ウォードを投げ飛ばすなど、遺恨対決の要素はそこかしこにあった。
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モーニングの“暴走”で1回戦でニックスに敗退