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「NBAは“マフィア”だから」ヨーロッパ人HCが誕生しない理由を、欧州の名将たちが語る<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2022.08.15

欧州出身でNBAのHCを務めたのはココスコフ(右)のみ。ヨーロッパ人指揮官が採用されない理由はいったいどこにあるのか。(C)Getty Images

 ヨーロッパで生まれ育った選手がNBAで活躍することは、今や珍しくなくなった。というより、2018-19シーズンから4年連続でNBAのシーズンMVPを独占しているのは、ヨーロッパ出身のヤニス・アデトクンボ(ミルウォーキー・バックス/ギリシャ/2019、20年)とニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ/セルビア)だ。

 しかし、そんな彼らを育てた欧州の指導者たちがNBAの球団を率いる例はほとんどない。唯一の例外は、セルビア人のイゴール・ココスコフ(現ブルックリン・ネッツアシスタントコーチ)。彼は2018-19シーズン、北米以外で生まれ育った指導者として、NBA史上初めてフェニックス・サンズのヘッドコーチ(HC)に任命された。

 ただ、指導者としての彼の活動の場はアメリカで、まだ駆け出しだった頃に現地に渡り、カレッジバスケットボールからNBAにステップアップ。そこで18年間、計6球団でアシスタントコーチとして経験を積むという、例外的なキャリアを経ての採用だった。ちなみにこの時は19勝63敗という球団史上ワースト2位の成績でカンファレンス最下位に沈むと、1シーズンのみで解任されている。
 
 そんななか、現在NBA入りの噂が絶えないのが、トルコ人のエルギン・アタマンだ。彼は昨季、アナドルー・エフェスをユーロリーグ2連覇に導き、同リーグの年間最優秀監督にも選ばれた、今ヨーロッパでもっとも勢いのある指導者だ。

 しかし、兼任するトルコ代表のヘッドコーチとしてユーロバスケット(9月1~18日)に向けたキャンプ中のアタマンHCは、トルコメディアに「NBAに行くという目標が達成される可能性は低くなってきた。それは、NBAが別世界だとわかったから」だと発言。アタマンは以前からNBAチームを指揮することに意欲的だったが、複数の球団と実際に話し合いを持ったことで得た感触を赤裸々に語っている。

「私は常々『NBAのチームからオファーが来たら迷わず行く』と言っていたが、相手にはそんなつもりはないようだ。ただ『何年かここでアシスタントコーチをやってくれ』と言われるだけ。(NBAの)ヨーロッパ人ヘッドコーチに対する見方は非常に異なっている。事実、ヨーロッパ人のコーチが、欧州からNBAにヘッドコーチとして行ったことはない。NBAの歴史においてゼロだ」
 
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「NBAは選手主体。あなたはチームを管理できない」と言われたアタマンHC