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ホテルでの恐怖体験、始球式で大暴投、記者を驚かせた聡明さ…ドラフト前後の“ウェンバンヤマ狂騒曲”<DUNKSHOOT>

小川由紀子

2023.06.26

22日のドラフトで1位指名を受け、NBAキャリアが幕を開けたウェンバンヤマ(右)。今季はその一挙手一投足に注目が集まりそうだ。(C)Getty Images

 現地時間6月22日、ニューヨーク州ブルックリンのバークレイズ・センターで開催されたNBAドラフト2023。ここで19歳のヴィクター・ウェンバンヤマは、サンアントニオ・スパーズからいの一番で名前を呼ばれ、前評判通りにフランス人プレーヤー初の1位指名選手となった。

「人生で一番長い5分間だった。あの瞬間からドキドキし始めて、家族もみんなシーンとして、時計を眺めていた」

 アダム・シルバー・コミッショナーが発表を始める前の瞬間を、ウェンバンヤマはそう振り返っている。

「何度も想像していた」という、自分の名前が呼ばれる場面が現実のものとなると、ウェンバンヤマは父フェリックス、母のエロディ、3x3バスケットボールの選手である妹のイブ、フランスリーグのアスベルに所属する16歳の弟オスカー、そしてエージェントに広報担当者と順番にハグを交わし、同じくグリーンルームで待機していた同胞のビラル・クリバリ、ライアン・ルパートとエールを交換しながら、コミッショナーが待ち受ける壇上へと上がった。
 
「僕が大好きな色。ちょっと銀河系なイメージで、エイリアン的で、宇宙的。僕自身を表現するのにぴったりだ」と選んだダークグリーンのスーツは、フランスのテイラーによる特注品。靴は老舗J.M.ウィンストンがあつらえたものだ。 胸元で光り輝いていたアクセサリーは、エネルギーを発するヒーリング・ストーン、ビスマス結晶を使ったもので、ある夜、夢の中で見たものをジュエリーデザイナーに形にしてもらったのだという。

 代わる代わるメディアのインタビューに応じていたウェンバンヤマが、カメラをはばかることなく涙を流すシーンも見られた。

「ずっと夢見たことが実現して、涙を堪えきれない」

 そう声を絞り出す兄を見て、横にいた弟のオスカーも目元を拭っていた。

 宴のあとは、7位で指名を受けたメッツ92の同僚クリバリ(インディアナ・ペイサーズ→ ワシントン・ウィザーズ)、43位指名でポートランド・トレイルブレイザーズ入りが決まったルパート、そしてフィジカルトレーナーや、10歳の時から彼を育てたパリ近郊のクラブ、ナンテールの会長、ニューヨーク・ニックスに所属するフランス代表の先輩エバン・フォーニエも合流し、祝賀会が行なわれた。会場となったのは、ソーホー地区にある『ラデュレ』。フランスの老舗高級パティスリーだ。
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ドラフト直前のウェンバンヤマを襲った“恐怖体験”