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NBA

"ドリームチーム"結成の引き金になった屈辱のソウル五輪の真実。アメリカのプライドが崩れた日――

出野哲也

2019.11.09

攻守で暴れ回ったサボニス(写真奥一番左)の活躍により、ソ連が16年ぶりの金メダルを獲得。(C)Getty Images

攻守で暴れ回ったサボニス(写真奥一番左)の活躍により、ソ連が16年ぶりの金メダルを獲得。(C)Getty Images

 ライバルと目されていたのは、いずれも東欧の強豪国であるソ連とユーゴスラビア。ソ連代表の主軸はサルナス・マーシャローニスとリマス・クルティナイティス、そして86年に負ったアキレス腱断裂を乗り越えた身長221㎝の巨人、アルビダス・サボニス。いずれも、当時まだソ連の支配下にあったリトアニアの出身者であった。

 ユーゴスラビアにはドラゼン・ペトロビッチやブラデ・ディバッツ、そして大会中に20歳を迎えたトニー・クーコッチもメンバーに加わっていた。
 
 前回大会の84年ロサンゼルス五輪で優勝し、予選を免除されていたアメリカは、本戦のグループリーグではB組で5戦全勝。6点差だった2試合目のカナダ戦を除けば順当に大勝し、A組を4勝1敗で勝ち抜けたソ連、ユーゴスラビアともども決勝トーナメントに進んだ。

 続く準々決勝でも、アメリカはプエルトリコを37点差で一蹴。ユーゴスラビアもカナダを問題なく退けた。しかしソ連は、前年のパンアメリカン大会でアメリカを破った難敵ブラジルに苦戦。同国最大のスーパースター、オスカー・シュミットに46得点を奪われ、5点差での辛勝と、準決勝でのアメリカ戦を前に守備面での不安が残った。

 だが72年の因縁の一戦以来、16年ぶりとなる五輪での米ソ直接対決はソ連ペースで試合が進む。マーシャローニスがゲームをコントロールし、正確なパスとアウトサイドシュートでアメリカの強固な守備をかいくぐり、得点を積み重ねていく。一方のアメリカは唯一のシューターだったホーキンスがヒザを痛めて欠場。マニングもゲーム開始早々ファウルトラブルに陥り、ベンチに下げざるを得なくなる。得点力が大幅にダウンしたことで、前半終了時には37-47と差をつけられてしまった。

 後半に入っても、アメリカは2度にわたって2点差まで詰め寄るも逆転には至らず、ソ連リードのままゲームは終盤を迎える。試合時間残り21秒、ウィリー・アンダーソンがスティールからレイアップを決め3点差。続くソ連の攻撃も、一旦はステイシー・オーグモンのブロックで防いだがここでルーズボールを奪えず。ファウルゲームを仕掛けるも、残り5秒となって万事休す。その後さらに3点を追加され、76-82で敗戦を喫した。

 ロビンソンは19得点、12リバウンドと奮闘したものの、4本の3ポイントを含む28得点をマークしたクルティナイティスのプレーが上回っていた。オリンピック史上、アメリカにとって通算86試合でふたつ目となる黒星は、判定などに責任を転嫁できない、正真正銘の敗北だった。
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