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NBA

ウォール、カズンズらケンタッキー大から5人の1巡目指名が誕生した2010年。ただ最大の出世株は……【NBAドラフト史】

大井成義

2019.12.30

1位指名のウォールはリーグ屈指の司令塔に成長。ただ、プレーオフで活躍したイメージが薄いせいか、インパクトには欠ける印象もある。(C)Getty Images

1位指名のウォールはリーグ屈指の司令塔に成長。ただ、プレーオフで活躍したイメージが薄いせいか、インパクトには欠ける印象もある。(C)Getty Images

 そのやり取りからもわかるように、2010年のドラフト1位候補の筆頭は、ケンタッキー大1年の新星ウォールだった。ずば抜けた身体能力を持ち、とりわけスピードとクイックネスは他の追随を許さず、加えて正統派PGの資質も持っている。ある識者が、「デリック・ローズとラジョン・ロンドのハイブリッド版」と言えば、別の識者が「いやいや、ドゥエイン・ウェイドとクリス・ポールのハイブリッド版だ」と例えるほど、その評価は高かった。

 この年のロッタリーにおいて、与えられた1位指名権獲得率が25%と最も高かったのが、レギュラーシーズンを12勝70敗という歴代ワースト7位タイの成績で終えたネッツ。この日は、前の週にリーグからチームオーナーの承認を受けたばかりのロシア人ビリオネア、ミハイル・プロホロフが直々に結果発表イベントへ参加し、1位指名権獲得への意欲を示した。ネッツ買収後、プロホロフが公の場に姿を現わしたのは、これが初めてだった。

 2番手はウルブズ(19.9%)、3番手キングス(15.6%)、4番手ウォリアーズ(10.4%)、5番手ウィザーズ(10.3%)の順で、1位指名権を争った。

 出席者の紹介が終わるやいなや、抽選の結果発表が行なわれた。NBA副コミッショナー(当時)のアダム・シルバーが、結果順に積み重ねられたLPレコード大の封筒を14位から開封し、中のカードに描かれたチームを発表していく。7位までは波乱もなく成績順に決まっていったが、6位に本来のシクサーズではなく、4番目の確率のウォリアーズがアナウンスされた。この時点で、6番手のシクサーズ(5.3%)と5番手ウィザーズのジャンプアップが確定する。
 
 最後に残ったのがネッツ、シクサーズ、ウィザーズの3チーム。プロホロフとホリデー、そして御年85歳(当時)のアイリーン・ポーリンの各代表者がステージ中央に集められ、シルバーが開封していく様子を固唾をのんで見守った。

 3位ネッツ。そして、2位シクサーズ――。この瞬間、ウィザーズの1位指名権獲得が確定する。確率10.3%を覆してのアップセット劇によってもたらされた1位指名権は、ウィザーズにとって2001年以来、9年ぶりとなる僥倖だった。前回は、共同オーナー兼バスケットボール部門社長のマイケル・ジョーダンが、まだ評価の定まっていない高校生のクワミ・ブラウンを独断で強行1位指名するという、ドラフト史に残る選択ミスを犯している。そんな苦い経験を払拭するためにも、この年の1位指名権獲得はウィザーズにとって殊のほか喜ばしいものだった。

 見事大役を務め上げたアイリーンは、ウィザーズの名物オーナー、エイブ・ポーリンの未亡人。エイブはNBA歴代最長となる46シーズンのオーナーシップを経て、このロッタリーの半年前、2009年11月に他界している。享年85。あの天下のジョーダンをクビにしたオーナーとしても、つとに有名だ。
 

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