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NBA

ロッタリー史上最大の番狂わせ年――20年の時を超えて明かされた電撃トレードの舞台裏【NBAドラフト史:1993年】

大井成義

2019.12.15

“走れるビッグマン”との期待から2位指名されたブラッドリーだったが、シクサーズは3年目の途中で放出。賭けは失敗に終わった。(C)Getty Images

“走れるビッグマン”との期待から2位指名されたブラッドリーだったが、シクサーズは3年目の途中で放出。賭けは失敗に終わった。(C)Getty Images

 中継番組を放送したTNTは、上位指名が濃厚な5人のプレーシーンをオープニング映像に組み込んだ。まずはウェバーとブラッドリー、続いてケンタッキー大3年のジャマール・マッシュバーン、メンフィス州大(1994年にメンフィス大に改名)3年のアンファニー“ペニー”ハーダウェイ、UNLV4年のアイザイア・ライダー。

 NBAコミッショナーのデイビッド・スターンが、1位指名選手としてウェバーの名前を読み上げると、アリーナは割れんばかりの歓声に包まれた。過去の全ドラフトの中でも、最大級の盛り上がりだろう。グリーンルーム(選手と関係者の控えスペース)では、家族のほか、会場に駆けつけた元チームメイトのローズと熱いハグを交わし、栄えある1位指名を心から喜ぶウェバーの姿があった。

 ビッグマンの獲得を公言していた2位のシクサーズはブラッドリーを、3位のウォリアーズがペニーを指名。4位のマブズがマッシュバーンを指名し、ステージ上での記念撮影と場内インタビューを終えた直後、スターンよりトレードが発表される。

 1位のウェバーと、3位のペニーに将来のドラフト1巡目指名権3つ(1996、98、2000年)を付けた形でのブロックバスタートレードが成立。ドラフト当日に1位指名選手がトレードされるというのは史上初めての出来事であり、アリーナは騒然となった。
 
 この上位3チームの間で何らかのトレードが行なわれることは、あらかじめ想定された動きでもあった。中継番組の冒頭でも何度か触れられており、解説のダグ・コリンズは、マジックがブラッドリーを1位で指名し、3位ペニーとのトレードが行なわれるだろうと予想していた。

 ウェバーとペニーのトレードは、周到に計画されていたことが、後に当事者による証言から判明している。2016年4月、マジック創設からシャック&ペニー時代の隆盛、さらには夢の終焉までを描いたESPNのドキュメンタリー『This Magic Moment』が放送された。その中で語られた証言と、2015年に若者向けカルチャー誌『Complex』のウェブサイトで紹介されたペニーのストーリーから、世紀のトレードの舞台裏を覗き見てみたい。

 ロッタリーで奇跡的に1位指名権を手にしたマジックは、有力選手全員とワークアウトを行ない、ウェバー獲得の方向で固まりつつあった。シャックとウェバーによる超強力なフロントコートをもってすれば、長年に渡ってリーグを制圧することができる。シャックとブラッドリーのツインタワー構想もあったが、即戦力として、また将来性の観点からも、ウェバー獲得が妥当な選択だった。ペニーはワークアウトで大きなインパクトを残せず、優先順位的にはウェバー、ブラッドリー、マッシュバーンの次に位置していた。
 

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