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NBA

ロッタリー史上最大の番狂わせ年――20年の時を超えて明かされた電撃トレードの舞台裏【NBAドラフト史:1993年】

大井成義

2019.12.15

4位指名のマッシュバーンは、得点力を武器に長期間エース級の活躍を見せた。だが、絶頂期の2004年に右ヒザを故障して無念の引退となった。(C)Getty Images

4位指名のマッシュバーンは、得点力を武器に長期間エース級の活躍を見せた。だが、絶頂期の2004年に右ヒザを故障して無念の引退となった。(C)Getty Images

 1992-93シーズン終了後、シャックは映画『Blue Chips(邦題「ハード・チェック」)』の撮影に入る。1994年に封切られた社会派ドラマで、主役はニック・ノルティ。華やかなカレッジバスケットボールの裏側に光を当て、有力選手獲得に際し飛び交う金品や、八百長疑惑といった暗部を描き出した意欲作だった。その映画の準主役としてシャックとペニーが起用され、2人はすぐさま意気投合する。

 監督のウィリアム・フリードキン(代表作は『フレンチ・コネクション』、『エクソシスト』など)は、高校時代優秀なバスケットボール選手で、プロを目指したほどだった。また脚本を担当したロン・シェルトンもカレッジの元スター選手。それゆえ、映画にはリアルなプレーシーンがふんだんに盛り込まれ、試合の場面ではペニーと同じ1993年ドラフト組のカルバート・チェイニーやボビー・ハーリーらを呼び寄せ、本気で対戦させた。ペニーはシャックの望む場所に絶妙なパスを出しまくり、シャックはペニーの持つ才能に惚れ込む。上げた手のひらに、まるで吸い込まれるようにパスが送られてきたという。
 
■20年の時を超えて明かされた電撃トレードにまつわる秘話

 身長201㎝と、PGとしては上背のあったペニーは“マジック・ジョンソンの再来”と謳われ、抜群の身体能力とバスケットボールセンスを武器に、あらゆるプレーを高い水準でこなすことができた。新時代のオールラウンドプレーヤーであり、何よりエゴの少ないアンセルフィッシュな選手だった。

 シャックはマジックのエグゼクティブ、ジョン・ガブリエルにすぐさま電話をかけ、ペニーをもう1度ワークアウトに呼ぶよう進言。「ウェバーは素晴らしい選手だが、俺に必要なのはペニーだ」と伝え、ペニー獲得を強く要請した。「俺とウェバーは似た者同士、ボールをシェアすることはできないだろう」とも語っている。フランチャイズの絶対君主であるシャックの要請は、ほとんど命令に近いものだった。

 ドラフト本番の数日前、ペニー本人も電話でガブリエルに再度のワークアウトを要請。そしてドラフト前日、ペニーは2度目にして最後のチャンスを手にする。非公開で行なわれたワークアウトで、ペニーは必死にアピールした。守備に定評のあるベテランSGのアンソニー・ブーイがマッチアップすると、ペニーはすべての面で圧倒してみせた。マジック首脳陣の腹は決まった。
 

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