数十年に１人とも言われる逸材に、在学中にもかかわらずいくつかのＮＢＡチームが勧誘に動いた。それらの行為が、プロ入りを表明した選手以外のカレッジ選手に、ＮＢＡ関係者が接触してはならないというルールを生む結果となった。

　サンプソンは長身にしては珍しく俊敏かつバランスの取れた選手で、リバウンド、ドリブル、シュート、パス、それらすべてをそつなくこなした。そして、彼がとびきり高い評価を得た最大の要因は、プレーに対する意識の高さにあった。224㎝という恵まれたサイズと、優れた身体能力を備えているにもかかわらず、常にチームプレーに徹し、自己犠牲を厭わなかった。個人成績を気にかけることもなく、突出した選手にありがちなエゴも皆無。当時、サンプソンは次のように語っている。

「僕は１試合30点スコアすることもないし、20リバウンドを取ることもない。僕の数字は全然大したものじゃない。バスケットボールにとって、チームプレーこそが最も重要な要素だと思っている。チームが勝つために必要なことを、僕はただやるだけだ」。

「僕は身長224㎝のガードになりたいと、本気で思っている」。
  ■順調にスターへの階段を上るも故障により哀れな末路を辿る

　ニューヨークのマディソンスクエア・ガーデン内にあるフェルト・フォーラムで、1983年のＮＢＡドラフトは開催された。

　１位指名はもちろんサンプソン。２位のペイサーズはミズーリ大４年のスティーブ・スティパノビッチを、３位指名権も持っていたロケッツはルイビル大４年のロドニー・マックレイを、４位のサンディエゴ（現ロサンゼルス）・クリッパーズはアリゾナ州大３年のバイロン・スコットをそれぞれ指名。４位で指名されたスコットは、クリッパーズとの契約を拒否、数か月後に複数人が絡むトレードが敢行された。スコットはレイカーズの一員としてプロ生活をスタートさせ、“ショータイム・レイカーズ”の一員として、重要な役割を担うことになる。