セポリアに出向き、タナシス・アデトクンボを懸命に探したが、見つけることはできなかった。その時、鬼ごっこをして遊んでいる3人の少年と遭遇する。タナシスの3人の弟、ヤニス、コスタス、アレクシスだった。
ベリニアティスはバスケットボールの才能こそ授からなかったものの、アスリートの才能を見抜く目だけは天賦の才を持っていた。その彼が、ヤニスをひと目見て衝撃を受けたという。
「ヤニスを初めて見た時、空を見上げてこう言ったよ。『なんてこった。これほど身体能力が高く、才能に溢れた少年の存在に誰も今まで気がつかなかったなんて、どうやったら起こり得るんだ?』ってね」。
ところが――。
ベリニアティスのオファーをヤニスはあっさりと拒絶する。バスケットボールよりもサッカーがしたい、それが理由だった。彼の父親はサッカーの元プロ選手であり、意外なことにギリシャにおける人気スポーツはダントツでサッカーなのである。だが、巨大なダイヤの原石を目の前に、ベリニアティスは引き下がるわけにはいかなかった。
「もし君の両親に仕事を見つけてあげたら、君は私のためにバスケットボールをプレーしてくれるかい?」
そう尋ねると、ヤニスはようやくイエスと言ってくれた。ベリニアティスは回想する。
「ヤニスが口にしたあの『イエス』は、彼の人生とキャリアにとって、最も決定的な「イエス」だったよ」。 それでもヤニスはサッカー選手、タナシスは陸上選手への未練を断ち切れず、特にヤニスはバスケットボールにまったくと言っていいほど興味を示さなかった。ベリニアティスはヤニスの両親に、約束通り子どもたちがチームに加わってくれるなら仕事を紹介すると提案し、毎月500ユーロを支給する約束も交わした。そのリアルなオファーは功を奏し、両親からの熱心な勧めにより、ヤニスとタナシスは渋々フィラシリティコス入りを承諾する。
これにて一件落着、この後はヤニスがバスケットボールに真剣に取り組み、スターの階段を駆け上るだけかと思いきや、そうは問屋が卸さなかった。どうしてもバスケットボールをやりたくないヤニスは、練習をサボりまくった。ヤニスがフィラシリティコス入りを承諾したのは、単に家族にお金が必要だったからに他ならなかった。
ベリニアティスはあの手この手でヤニスをチームの練習に参加させようと奮闘したが、一筋縄ではいかなかった。挙句の果てには、「バスケットボールをやってみてダメだったら、サッカーのチームに連れていってやるから」と言ってなだめすかしても効き目なし。2年目になると、状況はますます悪化していった。練習を途中で放棄して家に帰ること10回以上、そのたびにベリニアティスはヤニスの自宅のあるセフォリアまで駆けつけて連れ帰った。
ベリニアティスはバスケットボールの才能こそ授からなかったものの、アスリートの才能を見抜く目だけは天賦の才を持っていた。その彼が、ヤニスをひと目見て衝撃を受けたという。
「ヤニスを初めて見た時、空を見上げてこう言ったよ。『なんてこった。これほど身体能力が高く、才能に溢れた少年の存在に誰も今まで気がつかなかったなんて、どうやったら起こり得るんだ?』ってね」。
ところが――。
ベリニアティスのオファーをヤニスはあっさりと拒絶する。バスケットボールよりもサッカーがしたい、それが理由だった。彼の父親はサッカーの元プロ選手であり、意外なことにギリシャにおける人気スポーツはダントツでサッカーなのである。だが、巨大なダイヤの原石を目の前に、ベリニアティスは引き下がるわけにはいかなかった。
「もし君の両親に仕事を見つけてあげたら、君は私のためにバスケットボールをプレーしてくれるかい?」
そう尋ねると、ヤニスはようやくイエスと言ってくれた。ベリニアティスは回想する。
「ヤニスが口にしたあの『イエス』は、彼の人生とキャリアにとって、最も決定的な「イエス」だったよ」。 それでもヤニスはサッカー選手、タナシスは陸上選手への未練を断ち切れず、特にヤニスはバスケットボールにまったくと言っていいほど興味を示さなかった。ベリニアティスはヤニスの両親に、約束通り子どもたちがチームに加わってくれるなら仕事を紹介すると提案し、毎月500ユーロを支給する約束も交わした。そのリアルなオファーは功を奏し、両親からの熱心な勧めにより、ヤニスとタナシスは渋々フィラシリティコス入りを承諾する。
これにて一件落着、この後はヤニスがバスケットボールに真剣に取り組み、スターの階段を駆け上るだけかと思いきや、そうは問屋が卸さなかった。どうしてもバスケットボールをやりたくないヤニスは、練習をサボりまくった。ヤニスがフィラシリティコス入りを承諾したのは、単に家族にお金が必要だったからに他ならなかった。
ベリニアティスはあの手この手でヤニスをチームの練習に参加させようと奮闘したが、一筋縄ではいかなかった。挙句の果てには、「バスケットボールをやってみてダメだったら、サッカーのチームに連れていってやるから」と言ってなだめすかしても効き目なし。2年目になると、状況はますます悪化していった。練習を途中で放棄して家に帰ること10回以上、そのたびにベリニアティスはヤニスの自宅のあるセフォリアまで駆けつけて連れ帰った。