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NBA

苦境を乗り越え、ユーロリーグの“キング”へ。コート内外で愛されたセオドロス・パパルーカス物語

小川由紀子

2020.08.31

「彼の最大の魅力は、201cmというサイズでポイントガードを完璧にこなすこと。つまり、ディフェンスで彼は1番、2番、そして3番の選手ともマッチアップできるんだ。そしてもうひとつは頭脳。彼はゲームの流れを素早く読み取ると、即座に最も良い解決法を考え出してしまう。ペネトレーションは素晴らしいし、アシストも絶品、リバウンドでも計算できる。もし何かこれ以上成長できることがあるとすれば、アウトサイドのシュートくらいだろう」

 パパルーカスの能力に惚れ込み、そう絶賛したイブコビッチは、彼の持つ力を存分に引き出せるチームを作り上げる。その期待に応えるように、パパルーカスはモスクワで、超一流プレーヤーへと成長を遂げた。

 今でこそファイナル4常連のCSKAが、欧州の頂点に返り咲く起点となったのは、イブコビッチとパパルーカスがタッグを組んだこの頃だ。パパルーカスが所属した6年間、国内チャンピオンの座も一度も譲らず、ユーロリーグのファイナル4にも毎年出場。イブコビッチの後を引き継いだエットーレ・メッシーナの下でも2度ユーロリーグ優勝を果たし、2006年は国内カップ戦も合わせて三冠を達成するなど、黄金期を築き上げた。
 
 CSKAで充実した6年を過ごした後、再びオリンピアコスに戻ったパパルーカスは、マッカビ・テルアビブで1年プレーし、キャリア晩年の2012-13シーズンに再度CSKAに戻って、その年のファイナル4を最後に36歳で現役を引退。現在は、ユーロリーグのアンバサダーを務めている。

 ギリシャ人記者やクラブ関係者らにパパルーカスの印象を聞くと、みなが口を揃えて次のように語った。「自然とリーダーシップがとれるが、威張ったり横柄なところがまったくない。あれだけの選手でいながら、勝利を第一に考えるチームプレーヤー。いつも明るく、話しかけやすい。メディアとも気さくに話をし、おまけに頭の回転が速い」と。

 それならば、と『DUNK SHOOT』でもインタビューを試みたことがある。2007年の欧州選手権の最中、ギリシャ人記者に仲介を頼むと、即OKの返事が来た。
 
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