2015年2月、当時人気を博していたスポーツ&ポップカルチャーブログ『Grantland』のインターネットラジオ番組に、コビーがゲストで出演した。ホストを務めるビル・シモンズとの会話の中で、自身のMVP受賞回数について本音をチラリと漏らし、一部メディアで話題となっている。引退宣言をする8か月前のことだ。
シモンズ:「コビー、君はMVPを1度しか取れなかったね。なぜ?」
コビー:「なぜなら、メディアが投票するから」
シモンズ:「おっ、切り返してきた!(シモンズはMVP投票権保持者)。2006年は投票権を持っていなかったけど、あの年は君が取るべきだった」
コビー:「多くのMVPを獲得することは、俺の使命ではなかった。チャンピオンシップを獲得することが使命だった。MVPのことを言われて気に障るかって? ああ、気に障るよ。もちろん困惑させられるよ」
同じく2015年2月、オールスターウィークエンドのメディアデーで、デュラントはこんな発言をしている。
「メディアは投票に関してあまりにパワーを持ちすぎている。率直に言って、俺たちが選手について知っていることを、あなたたちが知っているとは思えない。俺たちはリーグの選手たちと日々プレーしている。毎晩バトルを繰り広げているんだ。彼らがコートで何を言っているか知っているし、チームメイトをどう扱っているかも知っている。ゲームにどうアプローチするかもね。お互いの裏も表も知り尽くしている。
あなたたちはチームミーティングやフィルムセッションで、選手たちのゲームを分析するわけでもない。俺たちの投票もカウントされるべきだ。俺たちの意見も反映されるべき。なぜあなたたちが俺たち以上にパワーを持っているのか、俺にはわからないよ」
デュラントはその前のシーズン、彼らの投票によりMVPを獲得しているにもかかわらず、である。かなり踏み込んだ、勇気の要る発言であることは間違いない。何かきっかけでもあったのだろうか。
初期のMVPのように、選手による投票がいいのか、はたまた現在のやり方がベターなのか。どちらにもメリット、デメリットが考えられる以上、こればかりは優劣を付けられないだろう。例えば、現在のメディア100人に現役選手100人を加え、計200人の投票によって決めれば、などと素人なりに考えたりもするが、そう単純なものでもなさそうだ。
ただひとつ言えるのは、選手たちは8か月もの間お互いしのぎを削り、全身全霊を懸けて戦った相手の中から、そのシーズンの最も“Valuable(価値のある、貴重な、重要な)”選手を自分たちの手で決めて評価し、最大限の賛辞を贈りたい、そう思っているのだろう。その気持はよくわかる。自分よりバスケットボールを知らない人たちが決めるのではなく。
1980-81シーズンから投票権は選手の手からメディアに移行した。もしその変更がなされていなかったら、この40年間の受賞者の顔ぶれはどの程度変わっていただろう。はたしてコビーは、複数のMVPを受賞していただろうか。大いに興味があるところだ。
文●大井成義
※『ダンクシュート』2020年2月号掲載原稿に加筆・修正。
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シモンズ:「コビー、君はMVPを1度しか取れなかったね。なぜ?」
コビー:「なぜなら、メディアが投票するから」
シモンズ:「おっ、切り返してきた!(シモンズはMVP投票権保持者)。2006年は投票権を持っていなかったけど、あの年は君が取るべきだった」
コビー:「多くのMVPを獲得することは、俺の使命ではなかった。チャンピオンシップを獲得することが使命だった。MVPのことを言われて気に障るかって? ああ、気に障るよ。もちろん困惑させられるよ」
同じく2015年2月、オールスターウィークエンドのメディアデーで、デュラントはこんな発言をしている。
「メディアは投票に関してあまりにパワーを持ちすぎている。率直に言って、俺たちが選手について知っていることを、あなたたちが知っているとは思えない。俺たちはリーグの選手たちと日々プレーしている。毎晩バトルを繰り広げているんだ。彼らがコートで何を言っているか知っているし、チームメイトをどう扱っているかも知っている。ゲームにどうアプローチするかもね。お互いの裏も表も知り尽くしている。
あなたたちはチームミーティングやフィルムセッションで、選手たちのゲームを分析するわけでもない。俺たちの投票もカウントされるべきだ。俺たちの意見も反映されるべき。なぜあなたたちが俺たち以上にパワーを持っているのか、俺にはわからないよ」
デュラントはその前のシーズン、彼らの投票によりMVPを獲得しているにもかかわらず、である。かなり踏み込んだ、勇気の要る発言であることは間違いない。何かきっかけでもあったのだろうか。
初期のMVPのように、選手による投票がいいのか、はたまた現在のやり方がベターなのか。どちらにもメリット、デメリットが考えられる以上、こればかりは優劣を付けられないだろう。例えば、現在のメディア100人に現役選手100人を加え、計200人の投票によって決めれば、などと素人なりに考えたりもするが、そう単純なものでもなさそうだ。
ただひとつ言えるのは、選手たちは8か月もの間お互いしのぎを削り、全身全霊を懸けて戦った相手の中から、そのシーズンの最も“Valuable(価値のある、貴重な、重要な)”選手を自分たちの手で決めて評価し、最大限の賛辞を贈りたい、そう思っているのだろう。その気持はよくわかる。自分よりバスケットボールを知らない人たちが決めるのではなく。
1980-81シーズンから投票権は選手の手からメディアに移行した。もしその変更がなされていなかったら、この40年間の受賞者の顔ぶれはどの程度変わっていただろう。はたしてコビーは、複数のMVPを受賞していただろうか。大いに興味があるところだ。
文●大井成義
※『ダンクシュート』2020年2月号掲載原稿に加筆・修正。
【PHOTO】「Mr.レイカーズ」&「Mr.NBA」史上最高のスーパースター、コビー・ブライアント特集!