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NBA

アイザイア・トーマスに加え、変わり種が多く指名された“異色選手の当たり年”。日本人初指名“伝説の巨人”の名も【NBAドラフト史:1981年】

大井成義

2020.04.07

 そして1981年NBAドラフトを代表する変わり種が、日本が誇る伝説の巨人、岡山恭崇だ。『ウィキペディア英語版』に“NBA史における高身長選手リスト”という項目があり、その冒頭に岡山の情報が次のように記載されている。

“1981年のNBAドラフト8巡目171位でウォリアーズに指名された、身長7フィート8インチ(234cm)の日本人バスケットボール選手岡山恭崇は、これまでNBAからドラフトされた中で最も背の高い選手。しかしながら、彼はNBAでプレーすることはなかった”

 そのリスト(2020年4月1日現在)によると、歴代同1位がジョージ・ミュアサン(元ネッツほか)とスラヴコ・ヴラネス(元ブレイザーズ)の2人で7フィート7インチ(231cm)。同3位がショーン・ブラッドリー(元シクサーズほか)、ヤオ・ミン(元ロケッツ)、マヌート・ボル(元ウォリアーズほか)の3人で7フィート6インチ(229cm)。

 その項目で岡山の身長は234cmということになっているが、メディアによって数字が若干違っていたりする。『ウィキペディア英語版』と『NBA.com』では234cm、『ウィキペディア日本版』や『スポーツ報知』のインタビュー記事では230cm、『朝日新聞デジタル』のインタビュー記事では228cm、そして岡山が現在勤めている会社のウェブサイトに掲載されている自己紹介欄では227cm。その差7cm、一般人にとっては大きな違いだが、身長2mを優に越す大巨人ともなると、単なる誤差に思えてしまうから面白い。

 こと背の高さにおいて、これまでドラフトされた8023人の頂点に立つ選手が日本人というのも、日本人男性が世界国別平均身長ランキングで60位程度であることを考えると、何気に凄いことである。
 
 NBAドラフト史上最も高い身長を誇る岡山だったが、39年前の夏、彼はNBAに挑戦しなかった。その理由を、2019年6月に『ハフポスト日本版』のインタビューで本人が詳しく語っている。少々長くなるが引用してみよう。

“「当時日本国内の試合も、オリンピックや世界選手権などの国際試合も、プロの選手は出場してはいけなかったんです。『そういうところ(NBA)に行ったら、ひょっとしたらもう日本代表チームでプレーできないし、国内のうちの会社のチームでプレーできなくなるので、とにかく一切交渉するな』ということで終わったんですね」”

“「日本のバスケットボール協会も、NBAがどういう組織なのか、ドラフトがどういうことなのか一切分かっていなかったんですよ。(中略)だけどよくよく調べてみると、『1軍の登録メンバーは12名か、無理だったな』というので終わっちゃったんです」”

“「8巡目指名ですし、ドラフトされたからプレーできたとは思っていません」”

“「(前略)今思えば、ルーキーキャンプには行きたかった。結局何も経験できなくて、ただドラフト指名されたということだけで終わってしまいました」”

 もし岡山が、すべてを投げ打ってでも挑戦していたなら、どんな結果が待っていただろうか。万が一ロースターに残ることができていたら、まだインターネットや衛星放送が普及していなかったとはいえ、その後の日本を取り巻くバスケットボールの環境や文化に大きな変化をもたらし、地殻変動を生じさせていたに違いない。そう考えると、ちょっともったいなかったような気もする。

文●大井成義

※『ダンクシュート』2018年7月号掲載原稿に加筆・修正。

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