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NBA

リーグ王者が1位指名権を手にした史上唯一の珍事。レイカーズが隆盛を築くきっかけとなった1982年ドラフトを振り返る【NBAドラフト史】

大井成義

2020.05.25

 球団社長のジーニー・バスや副社長のジム・バス、もしくはコビーがロッタリーに出席してもよさそうなものだったが、なぜウォージーに白羽の矢が立ったのか、その明確な理由は本人に伝えられなかった。レイカーズ最後のドラ1選手に出席してもらうことで、ゲンを担ぎたかったのだろうか。

 2013-14シーズン、レイカーズの成績は下から6番目となる27勝55敗。1位指名権の当選確率は6.3%と低かったが、大波乱が頻発することで有名なNBAドラフトロッタリー、確率ひと桁台のチームも希望を捨てる必要はまったくなかった。

 古巣のためにひと肌脱ぐ決意をしたウォージーは、さっそくラッキーチャーム(アイテム)の入手に取り掛かる。考えに考えた末、ロッタリーの会場に持ち込もうと決めたのは、レイカーズ・レジェンドの古いボブルヘッド(首振り人形)3体。

 そのうちの1体、チック・ハーンの人形はすでに持っていた。ハーンは42年間に渡りレイカーズの専属アナウンサーを務めた伝説的人物で、82年のウォージーのドラフトに参加していた。“スラムダンク”や“エアボール”といった言葉の生みの親としても、つとに有名だ。
 
 残りの2体は、ともに前年の2013年に他界した元オーナーのドクター・ジェリー・バスとビル・シャーマン。元NBA選手のシャーマンは、1971年から91年までレイカーズのHC、GM、球団社長を歴任し、チームの黄金期を支えた。1980年にキャブズとのトレードをまとめ上げ、ウォージーのレイカーズ入りのきっかけを作った人物でもあった。ウォージーはその古い2体の人形を探している最中で、インタビューはそこで終わっている。

 最終的に揃ったのは、シャーマンを除いた2体。ロッタリー会場で、ウォージーはそれらを机の上に並べ、結果発表に臨んだ。緊張した面持ちのウォージーと、小刻みに首を振るレトロで少々間の抜けたボブルヘッド。ほっこりとした気分にさせられた視聴者も多かっただろう。

 残念ながら頼みのボブルヘッドは効力を発揮せず、レイカーズが手にした指名順位はひとつ落として7位。1位指名権を獲得したのは、確率9番目のキャブズ。なんと当選確率1.7%を覆しての、史上2番目となる大アップセット劇だった。

 ボブルヘッドが3体揃っていたら……、そうウォージーは悔やんだに違いない。

文●大井成義

※『ダンクシュート』2018年2月号掲載原稿に加筆・修正。

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