アメリカで行なわれている拡大フォーマット第1回のクラブワールドカップは、現地6月26日でグループステージ(GS)が終了。28日から勝ち上がった16チームによる決勝トーナメントに入った。
アトレティコ・マドリー、ポルト、ボカ・ジュニオルス、リーベル・プレートが敗退する一方、インテル・マイアミ、モンテレイ、アル・ヒラルが勝ち上がるなど、いくつかの番狂わせが見られたものの、全体としては欧州、南米の強豪が順当に駒を進める展開となった。その中でイタリア勢も、インテルがリーベル、モンテレイ、浦和レッズと同居したグループEを首位で、ユベントスもマンチェスター・シティ、アル・アイン、ウィダードと同居したグループGを2位でそれぞれ通過。ベスト16進出を果たしている。
このクラブW杯は、2024-25シーズンを継続する形を取りつつも、開催期間は25-26シーズンにまたがるカレンダーになっている。そのため、シーズン末の6月30日で契約満了を迎える選手は7月1日から起用できなくなる一方、新シーズンに向けて獲得した選手を前倒しで登録して起用できる(6月最初の10日間だけ移籍ウィンドウがオープンになっていた)など、いくつか特例的な措置が取られており、参加するクラブにとっては位置付けが難しい大会という側面も持っている。
インテルを例にとっても、24-25シーズンを戦ったシモーネ・インザーギ監督が、6月1日に行なわれたチャンピオンズリーグ(CL)決勝の直後に電撃退任し、そこから大会が開幕するわずか10日間あまりのうちに、新監督を選任して登録する選手の陣容を整え、アメリカ西海岸に移動しなければならなかった。
本来ならば、24-25シーズンの延長線上、さらにいえば22-23から続いたインザーギ体制の総決算として位置付けられるはずだったこの大会は、むしろクリスチャン・キブ新監督による新たなサイクルの第一歩、あるいはそこへの橋渡しとなる過渡的なイベントという位置付けに変わってしまった感がある。
チームの陣容も、6月末で契約が満了するホアキン・コレアとマルコ・アルナウトビッチ、さらにはイスラエルとイランの紛争による空域封鎖の影響で母国イランを出国できなかったメフディ・タレミと3人のFWがメンバーから外れた一方、セバスティアーノとフランチェスコ・ピオのエスポージト兄弟、そしてバレンティン・カルボーニと、レンタル先から復帰した3人のアタッカーを登録。さらには6月のウィンドウで新たに獲得したMFペタル・スチッチとWBルイス・エンリケが加わるなど、「新シーズン仕様」に近い構成となっている。
キブ新監督は準備期間がなかったこともあり、3バック(と5バック)の基本配置とそれに基づく攻守のメカニズムを維持しつつ、自身のカラーを反映する微調整を少しずつ加えていく手堅いアプローチを選んだ。その結果、グループステージでは最初の2試合で格下相手にやや苦戦したものの、勝負どころとなったリーベルとの最終戦で2-0の勝利を収めて、1位突破を果たしている。
モンテレイとの初戦、続く浦和戦は、いずれも相手がハイプレスを放棄して重心を下げて受けに回ったことで、インテルがボールを支配して攻め込む展開だった。しかし長いシーズンの蓄積疲労などから、マルキュス・テュラム、ハカン・チャルハノール、デンゼル・ドゥムフリースら少なくない主力が故障を抱え、ニコロ・バレッラ、フェデリコ・ディマルコ、アレッサンドロ・バストーニらもコンディション不良で60分前後プレーするのがやっとの状態。チーム全体として運動量もプレー精度も明らかに水準を下回っており、ファイナルサードの攻略に不可欠な強度とクオリティーが足りていなかった。
結果的に、どちらの試合でも前半の早い時間帯に先制を許し、その後も主導権を握りながらラスト30mで攻めあぐねる嫌な流れになった。しかし疲弊したチームの中で唯一、好調なパフォーマンスを見せている主将ラウタロ・マルティネスが、モンテレイ戦では前半42分、浦和戦では78分に、それぞれ貴重な同点ゴール。モンテレイ戦はそのまま引き分けに終わったものの、浦和戦はアディショナルタイムに入ったところでF・エスポージトのアシストからカルボーニが決勝ゴールを挙げ、重要な勝点3を確保した。
この2試合と続くリーベル戦を通してキブ監督は、セットプレー守備をマンツーマンからゾーンに変更。相手のビルドアップに対してマンツーマンでハイプレスをかける時間帯を増やし、それに伴ってチームの重心を上げる狙いから試合途中に配置を3-4-2-1に切り替えるといった「微調整」を施しながら戦った。大枠のところではインザーギ時代と変わらないものの、細かいディテールの部分で少しずつ変化が始まっているが、今のところチームはそれを問題なく消化できているように見える。
戦力的にも、前線に加わったエスポージト兄弟(とりわけ弟のフランチェスコ・ピオ)と、カルボーニがそれぞれゴールに絡む活躍を見せ、中盤のスチッチ、WBのルイス・エンリケ(とりわけ前者)もうまくチームに馴染んでいるなど、新体制に移行する「過渡期」としては順調な足取りと評価できるのではないか。
とはいえ、これから始まる決勝トーナメントで上位まで勝ち進めるかどうかはわからない。ラウンド・オブ16の相手フルミネンセも簡単な相手でないのはもちろん、そこを勝ち上がっての準々決勝はマンチェスター・Cとの対戦が濃厚。チームの戦力値、完成度ともに差があることは明らかであり、ここが最大の難関になりそうだ。
【動画】インテルとユベントス、それぞれのクラブW杯GS3戦目のハイライト
アトレティコ・マドリー、ポルト、ボカ・ジュニオルス、リーベル・プレートが敗退する一方、インテル・マイアミ、モンテレイ、アル・ヒラルが勝ち上がるなど、いくつかの番狂わせが見られたものの、全体としては欧州、南米の強豪が順当に駒を進める展開となった。その中でイタリア勢も、インテルがリーベル、モンテレイ、浦和レッズと同居したグループEを首位で、ユベントスもマンチェスター・シティ、アル・アイン、ウィダードと同居したグループGを2位でそれぞれ通過。ベスト16進出を果たしている。
このクラブW杯は、2024-25シーズンを継続する形を取りつつも、開催期間は25-26シーズンにまたがるカレンダーになっている。そのため、シーズン末の6月30日で契約満了を迎える選手は7月1日から起用できなくなる一方、新シーズンに向けて獲得した選手を前倒しで登録して起用できる(6月最初の10日間だけ移籍ウィンドウがオープンになっていた)など、いくつか特例的な措置が取られており、参加するクラブにとっては位置付けが難しい大会という側面も持っている。
インテルを例にとっても、24-25シーズンを戦ったシモーネ・インザーギ監督が、6月1日に行なわれたチャンピオンズリーグ(CL)決勝の直後に電撃退任し、そこから大会が開幕するわずか10日間あまりのうちに、新監督を選任して登録する選手の陣容を整え、アメリカ西海岸に移動しなければならなかった。
本来ならば、24-25シーズンの延長線上、さらにいえば22-23から続いたインザーギ体制の総決算として位置付けられるはずだったこの大会は、むしろクリスチャン・キブ新監督による新たなサイクルの第一歩、あるいはそこへの橋渡しとなる過渡的なイベントという位置付けに変わってしまった感がある。
チームの陣容も、6月末で契約が満了するホアキン・コレアとマルコ・アルナウトビッチ、さらにはイスラエルとイランの紛争による空域封鎖の影響で母国イランを出国できなかったメフディ・タレミと3人のFWがメンバーから外れた一方、セバスティアーノとフランチェスコ・ピオのエスポージト兄弟、そしてバレンティン・カルボーニと、レンタル先から復帰した3人のアタッカーを登録。さらには6月のウィンドウで新たに獲得したMFペタル・スチッチとWBルイス・エンリケが加わるなど、「新シーズン仕様」に近い構成となっている。
キブ新監督は準備期間がなかったこともあり、3バック(と5バック)の基本配置とそれに基づく攻守のメカニズムを維持しつつ、自身のカラーを反映する微調整を少しずつ加えていく手堅いアプローチを選んだ。その結果、グループステージでは最初の2試合で格下相手にやや苦戦したものの、勝負どころとなったリーベルとの最終戦で2-0の勝利を収めて、1位突破を果たしている。
モンテレイとの初戦、続く浦和戦は、いずれも相手がハイプレスを放棄して重心を下げて受けに回ったことで、インテルがボールを支配して攻め込む展開だった。しかし長いシーズンの蓄積疲労などから、マルキュス・テュラム、ハカン・チャルハノール、デンゼル・ドゥムフリースら少なくない主力が故障を抱え、ニコロ・バレッラ、フェデリコ・ディマルコ、アレッサンドロ・バストーニらもコンディション不良で60分前後プレーするのがやっとの状態。チーム全体として運動量もプレー精度も明らかに水準を下回っており、ファイナルサードの攻略に不可欠な強度とクオリティーが足りていなかった。
結果的に、どちらの試合でも前半の早い時間帯に先制を許し、その後も主導権を握りながらラスト30mで攻めあぐねる嫌な流れになった。しかし疲弊したチームの中で唯一、好調なパフォーマンスを見せている主将ラウタロ・マルティネスが、モンテレイ戦では前半42分、浦和戦では78分に、それぞれ貴重な同点ゴール。モンテレイ戦はそのまま引き分けに終わったものの、浦和戦はアディショナルタイムに入ったところでF・エスポージトのアシストからカルボーニが決勝ゴールを挙げ、重要な勝点3を確保した。
この2試合と続くリーベル戦を通してキブ監督は、セットプレー守備をマンツーマンからゾーンに変更。相手のビルドアップに対してマンツーマンでハイプレスをかける時間帯を増やし、それに伴ってチームの重心を上げる狙いから試合途中に配置を3-4-2-1に切り替えるといった「微調整」を施しながら戦った。大枠のところではインザーギ時代と変わらないものの、細かいディテールの部分で少しずつ変化が始まっているが、今のところチームはそれを問題なく消化できているように見える。
戦力的にも、前線に加わったエスポージト兄弟(とりわけ弟のフランチェスコ・ピオ)と、カルボーニがそれぞれゴールに絡む活躍を見せ、中盤のスチッチ、WBのルイス・エンリケ(とりわけ前者)もうまくチームに馴染んでいるなど、新体制に移行する「過渡期」としては順調な足取りと評価できるのではないか。
とはいえ、これから始まる決勝トーナメントで上位まで勝ち進めるかどうかはわからない。ラウンド・オブ16の相手フルミネンセも簡単な相手でないのはもちろん、そこを勝ち上がっての準々決勝はマンチェスター・Cとの対戦が濃厚。チームの戦力値、完成度ともに差があることは明らかであり、ここが最大の難関になりそうだ。
【動画】インテルとユベントス、それぞれのクラブW杯GS3戦目のハイライト
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