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海外サッカー

サッカー界からヘディングが消える!? 英国で強まる“撲滅”に向けた動き「元選手がすでに命を…」【現地発】

松澤浩三

2021.04.06

現役時代はヘディングで数多くのゴールを量産した名手のシアラーも現状に苦言を呈する一人だ。(C) Getty Images

現役時代はヘディングで数多くのゴールを量産した名手のシアラーも現状に苦言を呈する一人だ。(C) Getty Images

 とはいえ、この問題は、突然に浮上した問題ではない。筆者の覚えている限りでは、2000年代初頭ごろから英国内でクローズアップされてきたトピックだ。とくにここ数年は、認知症が原因で66年のワールドカップを制したイングランド代表メンバーが立て続けに他界したこともあり、より取り上げられるようになった印象である。

 レイ・ウィルソンとマーティン・ピータースは18年、19年に、さらに昨年は7月にジャック・チャールトンが、10月にノビー・スタイルスが認知症やアルツハイマー型認知症が理由で亡くなった。また11月には、あの“サー・”ボビー・チャールトンが認知症であることが公表された。

 かねてからヘディングと認知症の関係性について真剣に向き合い、問題視してきた選手もいる。元イングランド代表FWのクリス・サットンだ。

 60年代にノーリッジ・シティで活躍した元サッカー選手だった父マイクさんを、長らく認知症に苦しんだ末に、昨年12月下旬に亡くしていたサットンは、先日、英国国営放送『BBC』のラジオで感情を露わにしながら、PFAやFAを痛烈に批判している。

「彼らは十分な対応をしていない。とてつもない大問題を長年にわたって無視し、背を向けてきたのだ。私の父を含めた数百人という元選手がすでに命を落としている。早急に対応しなくてはならない問題だ。FAとPFAはまるで十分な対応をしていないのだから、政府が介入して解決すべき由々しき事態だろう」
 
 また、17年に『認知症、フットボール、そして私』という『BBC』のドキュメンタリー番組でパーソナリティーを務めたプレミアリーグの最多得点記録保持者で、元イングランド代表FWのアラン・シアラーも、「課題は山積み」と話していたのを筆者は記憶している。

 すでに詳細なデータも出てきてはいる。『BBC』によると、18年に米国のブリティッシュコロンビア大学の研究チームが発表した調査結果に以下の内容があったという。

「サッカーボールの重さは約500グラム。科学者たちは、ヘディングの際、この重さのボールが最高速度時速128キロで頭にぶつかるとしている。ボールが頭に当たると、頭蓋骨内で浮いている脳が後頭部の骨にぶつかり打撲傷ができる。

 またヘディングをした後には脳細胞にダメージを及ぼす、たんぱく質の血中レベルが上昇するとの結果が、研究で出た。わずか1回のヘディングで脳に大きな損傷が起こる可能性は低い。しかし、長期間にわたるヘディングが問題を引き起こす恐れはある」
 
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