――プロ１年目は緊張しなかった？

「しませんでしたね。一番下からのスタートでしたから。開幕前のキャンプの時点では、このままではベンチにも入れないんじゃないかって状態で。でも僕はそういう逆境が好きなんです。下がなければ這い上がるしかないじゃないですか。シーズン前半は何がなんでも爪痕を残してやるって想いでいて、シーズン後半はここまで使ってもらっているのだから、チームを引っ張らなきゃ、ルーキーというのは言い訳にならないって。すごく燃えていましたね」

――セレッソに入っても、その熱は変わらない？

「はい。やっぱりレベルがかなり高いし、常にチャレンジ精神を持って毎日を過ごしています。１試合１試合結果を残さないと先がない、そんな状況がすごく楽しいです。どんな困難があっても、絶対に諦めない、そんな気持ちでいます」

――雑草魂というか？

「まさに、それです。一番下から這い上がってきた自負があるし、チームを引っ張っていく立場も経験しました。だからこそ今は、どんな時でも自分の気持ちを整理して勝負どころで力を出せる自信があります」

――昔、ビビリだったなんて嘘のようです。

「本当に昔はめちゃくちゃビビリだったんですよ。サッカーをやっていて、すごく緊張する場面を山ほど経験してきて……例えば高校選手権の準決勝で５人目のＰＫキッカーを任された時なんて、立っていられないんじゃないかってくらい精神的に張り詰めていました［編集部・注／14年度の高校選手権準決勝・流通経済大柏高戦。１ －１の同点でＰＫ戦に突入すると、５人目の坂元が決めて、前橋育英高を決勝へと導いた］。そういう舞台を何度も踏んできて変われたのかなと」
  ――高校時代にドリブラーとしてのスランプを乗り越え、大学時代にチームを引っ張る責任感を学んだ。そしてプロ２年目の今年は、スタイルを進化させようとしている。またひとつの転機になるかもしれませんね。

「自分の中にすごく可能性を感じています。プレーの幅が格段に広がる気がするし、今が変わるタイミングじゃないかなって」

――では、ここからどんなキャリアビジョンを描いていますか？

「詳しくは決めていないです。とにかく毎年結果を残して常に上を目指す。そういう想いでいます。もちろん日本代表にもなりたい。そしてなによりセレッソを引っ張っていく存在になって、Ｊ１優勝に導きたい。それが今の一番の目標です」

PROFILE
さかもと・たつひろ／ 1996年10月22日生まれ、東京都出身。170㌢・63㌔。青葉ＦＣ―ＦＣ東京Ｕ－15むさし―前橋育英高―東洋大―山形―Ｃ大阪。Ｊ１通算１試合・０得点。Ｊ２通算42試合・７得点。自他ともに認める最大の武器が、独特なリズムを刻むドリブル。素早い動きで相手を翻弄し、一瞬にして抜き去る。Ｃ大阪に加入した今季は、キャンプからの精力的なアピールが実り、公式戦２試合連続でスタメンに。今後のレギュラー定着が期待される人材だ。

取材・文●多田哲平（サッカーダイジェスト編集部）

※『サッカーダイジェスト』2020年３月26日号より転載