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海外サッカー

新型コロナ禍で欧州サッカーの移籍マーケットはどう変わる?予測困難な夏を読み解く「事象」と「傾向」

片野道郎

2020.05.04

人件費削減を図る上で手っ取り早い手段は高年俸である中堅・ベテランの放出。レアルならモドリッチとイスコが売却の対象か。(C)Getty Images

人件費削減を図る上で手っ取り早い手段は高年俸である中堅・ベテランの放出。レアルならモドリッチとイスコが売却の対象か。(C)Getty Images

 FIFAが出資してスイスのヌシャテル大学に設置されている研究機関CIES(国際スポーツ研究センター)は、3月30日に発表した週間レポートで、5大リーグの選手評価額は総額で327億ユーロ(約4兆875億円)から234億ユーロ(約2兆9250億円)へ、約28パーセント減少するだろうという予測を発表した。

 例えば、2~3年前までは高くても5000万ユーロ(約62億5000万円)が相場だったCBは、フィルジル・ファン・ダイクに8465万ユーロ(約105億8125万円)の値段がついた18年1月を契機に一気に跳ね上がり、昨夏は市場価値5000万ユーロの評価だったハリー・マグワイアが8700万ユーロ(約108億7500万円)でマンチェスター・ユナイテッドに移籍した。それを基準にすれば、例えばマグワイアよりは明らかに「格上」のカリドゥ・クリバリ(ナポリ)には1億ユーロ(約125億円)の値段がついてもおかしくないところだ。しかし、ディ・マルツィオ記者は「クリバリの評価額は8000~9000万ユーロから5000~6000万ユーロ程度まで低下するだろう」と予想している。クラブの減収幅が3割程度になれば、それと呼応する形で移籍金の相場も3割程度は下落するだろうという予測だが、これは先述したCIESの予測とも基本的に一致するものだ。
 
2:高額年俸選手の放出

 クラブが人件費削減を図る上で最も手っ取り早い手段は、年俸の高い選手を手放すことだ。その観点から見たときに「売りたい選手」の筆頭は、「レギュラークラスではあるが既存戦力で穴埋めが可能な高額年俸の中堅・ベテラン」だろう。この場合、補強はバックアッパーの獲得で物足りるので、獲得の予算を低く抑えることができる。

 具体的な候補名を挙げるとすれば、アルトゥーロ・ビダル、イバン・ラキティッチ(ともにバルセロナ)、ルカ・モドリッチ、イスコ(ともにレアル・マドリー)、エリク・ラメラ(トッテナム・ホットスパー)、アレクサンドル・ラカゼット(アーセナル)、ネマニャ・マティッチ(マンU)、ジェローム・ボアテング、ハビ・マルティネス(ともにバイエルン)、ユリアン・ドラクスラー(パリSG)といったところか。どの選手も、手放したとしても戦力的な「痛み」はそれほど大きくない一方で、人件費削減の効果は小さくない。ただし、先述のように「買い手市場」になるのは避けられないため、移籍金に関して多くを望むのは難しいだろう。

3:移籍金のかからない交換トレードの増加

 補強予算には限りがあるが、それでも戦力を強化したいクラブにとって最も都合がいいのは、キャッシュの支払いが必要ない選手トレードによる補強である。余剰戦力同士を等価交換できればベストながら、そこまで都合のいい形で双方の利害が一致するケースは稀だろう。しかし現在、インテルとバルセロナが進めているラウタロ・マルティネスの移籍交渉のように、移籍金のかなりの部分を交換要員となる選手によって充当し、残りをキャッシュで支払う形を取るなど、双方のクラブにとって利益になるような形でディールをまとめ上げるというケースが、これまで以上に増えることが予想される。例えば昨夏、ユベントスとマンCが行なったジョアン・カンセロとダニーロの交換のように、戦力的な要請というよりも財政的な要請を優先して、お互いが帳簿上の利益を出すために交換トレードを行なうケースも増えるだろう。
 

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