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Jリーグ・国内

中大バスケ部・サッカー部はなぜ一般社団法人を立ち上げたのか?【後編】トークン発行で予算だけでなくコアファンの獲得も視野に

THE DIGEST編集部

2023.08.09

 今回のプロジェクトがうまくいくと、それこそ大学スポーツに対する考え方やアプローチも変わってくることも期待できるかもしれない。大学界全般にポジティブな刺激をもたらす可能性を秘めている。
 

『あそこって食事環境がすごい良くなってるらしいよ』『来年から新しい寮で生活できるらしいよ』『保険外治療もガンガンサポートしてもらえるみたい』という魅力的な情報は学生アスリート同士のコミュニティですぐに伝わっていくものだ。そしてそうした情報は突き上げで各大学のトップにまで伝わっていくだろう。

 渡辺「私自身も、大学首脳陣には『こういう取り組みをしますよ』って伝えてます。現場の声としてそうしたものがあっちこっちから上がってくると、大学として目をつぶってられない状況になると思うんです。最終的には各部が一般社団法人といった法人格を作るより、大学が学校法人とは別に、全体として大学スポーツ組織を統括する事業法人みたいなのを作るべきではないかなと思うんです」

 大学スポーツ全体の経営母体が今より安定して、お金も多く動くようになってきたら、それは結果として、分母が比較的少ないマイナースポーツへのサポート改善にもつながっていく。大学におけるスポーツ施設がどんどん良くなってきたら、今度は地域社会への関与の仕方だって変わってくるはずだ。活動場所に悩む地域のスポーツ団体に解放することもできるかもしれない。禁止事項の多い公園に代わって、子どもたちが遊べる環境を作ることだってできるかもしれない。これまで以上に密接なコミュニティが生まれる確かなポテンシャルを持っているのだ。

 渡辺「メジャー、マイナー関係なく、スポーツに関わる人みんなの環境をよくしていこうというのが大事な観点だと思っています。またうちはマイナーのところが結構強かったりするんですよね(笑)」

 小学校、中学校、高校ではなく、プロではなく、大学だからできることがある。強化と普及、プロとグラスルーツ、メジャーとマイナーはどちらかに力を入れればいいというものではない。どちらも大切なものとして、両輪がそれぞれかみ合って進んだときに初めて機能するものだ。今回のプロジェクトがひとつのきっかけとなって、スポーツを愛する人がこれまで以上に増えていくことを期待したいではないか。

取材・文●中野吉之伴
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