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海外サッカー

非国民と呼ばれる“侮辱”にも耐え忍んだ英雄。若き日に受けた喝采と罵声――アルゼンチン代表とメッシの18年【前編】

チヅル・デ・ガルシア

2023.02.07

メッシを活かすためのチームプランを構築したサベージャ。この智将の就任がくすぶっていた偉才を変えた。(C)Getty Images

メッシを活かすためのチームプランを構築したサベージャ。この智将の就任がくすぶっていた偉才を変えた。(C)Getty Images

 だが、メッシに転機が訪れる。解雇されたバティスタの後を継いだアレハンドロ・サベージャ監督が、メッシを代表のキャプテンに任命したのだ。

 国内のラジオ番組で実施されたアンケートではリスナーの大半がこの決断に賛同せず。『La Nacion』の代表番を務めたクリスティアン・グロッソ記者も「メッシはグループのリーダーになるようなタイプではない」と断言。国内でのメッシを見る目がますます厳しくなっていたときに、サベージャはあえてメッシに大役を託したのである。

 当初、当人はキャプテンとしての責任について、「チームの一員としての責任は今までと同じ」と答えていた。

「代表における責任はベストを尽くすこと。キャプテン章をつけたからといって、自分の中で何かが変わったわけではない。もちろんキャプテンに選ばれて嬉しく思っている。(キャプテン章が)幸運をもたらしてくれることを祈っているよ」

「自分の中で何かが変わったわけではない」という言葉が本音でなかったのは、サベージャの指揮下で最初の公式戦となった2014年のブラジルW杯南米予選第1節(チリ戦)で明らかになった。この試合で、実に2年半ぶりとなる代表戦でのゴールを決めたメッシは、試合後に「キャプテンマークが僕に元気を与えてくれた」と正直な思いを語ったのだ。
 

 私は以前、メッシの幼馴染であり、親友のアグスティン・ルアニからこんな話を聞いた。

「レオ(メッシ)は子どもの頃プレーしていたニューウェルスでもずっとキャプテンだったんだよ。あのチームには、レオに任せておけば勝てるという安心感があった。みんながレオの指示に従い、レオも周りのみんなに合わせて動くチームだった。あいつがキャプテンになったことで、やっと代表がレオのチームになったと思ったものさ」

 サベージャは代表監督に就任した際、メッシをキャプテンに任命した理由について「彼をよく知る人たちから話を聞いて最善の結論が得られた。成熟を促してくれると思うからだ」と話していた。

 今思えば、誰もが「メッシはキャプテンに相応しくない」と確信していたなかでの勇気ある決断だった。

―――後編へ続く―――

取材・文●チヅル・デ・ガルシア
Text by Chizuru de GARCIA

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