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テニス界の至宝アルカラスが考える、若き王者シナーと共に築く「新時代のライバル関係」<SMASH>

スマッシュ編集部

2025.08.04

アルカラス(左)はかつてテニス界を支配してきたレジェンドたちとは違ったライバル関係をシナー(右)と築きたいと考えているようだ(写真はウインブルドン決勝)。(C)Getty Images

 今の男子テニス界で、最も注目されているライバル関係といえば、カルロス・アルカラス(スペイン/22歳/世界ランキング2位)とヤニック・シナー(イタリア/23歳/同1位)の若手2人だ。

 2022年の「全米オープン」でアルカラスが四大大会初優勝を果たして以来、メジャータイトルを取ったのは、ノバク・ジョコビッチ(セルビア/38歳/同6位)を含めた3人だけ。とりわけシナーが初優勝した2024年「全豪オープン」以降は、2人でタイトルを二分している。

 頂点を譲らぬ勝負強さやプレースタイルの相性の良さは、かつてテニス界を盛り上げたライバル関係とも比較され、ファンの期待は否が応でも高まる。例えばジミー・コナーズとジョン・マッケンローが繰り広げたように、火花散る言葉の応酬や衝突のドラマを求める声も少なくない。

 だが、当のアルカラスはそんな過熱する周囲の期待を、静かに見つめている。世界的経済メディア『フィナンシャル・タイムズ』のインタビューで、シナーとの関係について語っている。

「僕たちはコート上で素晴らしいバトルをしてきたし、コートの外でもよく顔を合わせています。時には一緒にトレーニングもするんです。そうして最終的には、良好な関係、つまり"美しい関係"が築かれるんです。

 もちろん、僕たちは勝ちたいし、お互いを打ち負かしたいと思っている。でも、コートの外では良い人間関係を築き、うまくやっていくというのは別の話。僕にとって、それはスポーツの美徳であり価値なんです」

 こうした関係性はビッグ3に近いものだろう。だが、彼らとの比較にも関心を示さない。
 
「テニス界には常に素晴らしいライバル関係と偉大な選手がいました。僕たちの試合をそういう目で見てもらえるのは光栄なことです。でも、最終的に僕たちには、彼らが成し遂げたことを再現する義務なんてないんです。むしろ、そう思い込んでしまうと、自分が信じるものや目指すものを見失い、プレッシャーに押しつぶされてしまう。

 だからこそ、違いを理解しなきゃいけない。僕たちは、そのプレッシャーや、彼らと同じことをしようなんて考えないようにしています」

 ビッグ3と同様に、アルカラスとシナーもまた、互いを高め合うことで競技レベルを押し上げている。だが、それは"再現"ではなく"新たな形のライバル関係"なのだろう。ウインブルドン後にはこう語っていた。

「この関係はどんどん良くなっていて、本当に感謝しています。なぜなら、毎日の練習でも自分の100%を出すモチベーションになるからです。ヤニックに勝つために必要なレベルは本当に高いですから」

 2人の関係はテニス界にどんな影響を与えるのか。まずは今季最後のグランドスラム「全米オープン」(8月24日~9月7日/アメリカ・ニューヨーク)での、新たな名勝負に期待したい。

構成●スマッシュ編集部

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