「2019年の花キューピットオープンや東レパンパシフィックオープンで獲得したポイントは、全米オープン後に順次消えていく」と日比野菜緒が知ったのは、全米オープンが始まってからのことだった。
テニスのランキングポイントは、獲得から52週で消失するのが基本である。ただ、2020年に中止に追い込まれた大会に関しては、2019年のポイントを2年間(104週)維持できるというのが、コロナ禍での特別処置だ。
さらには、2021年も中止もしくは延期になった大会はその限りではなく、104週を越えて残るポイントもある。例年の3月から10月に延期になったパリバ・オープンなどは、その一例だ。
今年も中止となったアジア開催の大会も、当初は来年上旬まで、2019年獲得ポイントが残る予定だったという。冒頭で触れた日本開催の2大会も、その一環。だが、ツアーが以前の姿を取り戻すにつれ、ランキングシステムも従来のそれに戻るべきだとの機運は、徐々に高まりつつあったようだ。
WTA(女子テニス協会)は選手たちの意見に耳を傾け、幾度も聞き取り調査を重ねた結果、「2021年末のランキングには、2019年のポイントは一切含まないようにする」との決断を下す。その情報がすべての選手に知らされたのは、9月上旬のことだった。
この1年で活躍した選手を評するためにも、従来のポイント換算法に早く戻すべきとの判断には、一定の合理性がある。
ただ、「ディフェンド」のチャンスすら得られなかった選手にしてみれば、やるせなさが残るのは如何ともしがたい。2019年の花キューピット単複優勝者の日比野ならば、なおのことだ。もちろん大会そのものは、今もヨーロッパや北米で開催されてはいる。だが、移動に伴う制約が多く、精神的なストレスも含め遠征のコストが増す中では、欧米への距離感もかつてと同じではありえない。
さらに日比野は、全米オープン直前に両手首を痛めるという、不運にも見舞われた。
思うようなパフォーマンスができないなか、ポイントは想定より早く消失し、シングルスランキングは103位に下降。この時期の大量ポイント消失が大きいのは、終盤に差し掛かった今季のスケジューリング、そして本戦出場が確実だった来年1月の全豪オープンにも影響するからだ。
「本戦から出られると思っていた大会に、予選から出ることになってしまう。今シーズンは、残り3~4大会に出る予定なので、そこでポイントを取れれば全豪本戦は大丈夫だと思いますが……」
やっぱり、モチベーションを保つのが難しいですね……。
日比野はポツリと、そうこぼした。
テニスのランキングポイントは、獲得から52週で消失するのが基本である。ただ、2020年に中止に追い込まれた大会に関しては、2019年のポイントを2年間(104週)維持できるというのが、コロナ禍での特別処置だ。
さらには、2021年も中止もしくは延期になった大会はその限りではなく、104週を越えて残るポイントもある。例年の3月から10月に延期になったパリバ・オープンなどは、その一例だ。
今年も中止となったアジア開催の大会も、当初は来年上旬まで、2019年獲得ポイントが残る予定だったという。冒頭で触れた日本開催の2大会も、その一環。だが、ツアーが以前の姿を取り戻すにつれ、ランキングシステムも従来のそれに戻るべきだとの機運は、徐々に高まりつつあったようだ。
WTA(女子テニス協会)は選手たちの意見に耳を傾け、幾度も聞き取り調査を重ねた結果、「2021年末のランキングには、2019年のポイントは一切含まないようにする」との決断を下す。その情報がすべての選手に知らされたのは、9月上旬のことだった。
この1年で活躍した選手を評するためにも、従来のポイント換算法に早く戻すべきとの判断には、一定の合理性がある。
ただ、「ディフェンド」のチャンスすら得られなかった選手にしてみれば、やるせなさが残るのは如何ともしがたい。2019年の花キューピット単複優勝者の日比野ならば、なおのことだ。もちろん大会そのものは、今もヨーロッパや北米で開催されてはいる。だが、移動に伴う制約が多く、精神的なストレスも含め遠征のコストが増す中では、欧米への距離感もかつてと同じではありえない。
さらに日比野は、全米オープン直前に両手首を痛めるという、不運にも見舞われた。
思うようなパフォーマンスができないなか、ポイントは想定より早く消失し、シングルスランキングは103位に下降。この時期の大量ポイント消失が大きいのは、終盤に差し掛かった今季のスケジューリング、そして本戦出場が確実だった来年1月の全豪オープンにも影響するからだ。
「本戦から出られると思っていた大会に、予選から出ることになってしまう。今シーズンは、残り3~4大会に出る予定なので、そこでポイントを取れれば全豪本戦は大丈夫だと思いますが……」
やっぱり、モチベーションを保つのが難しいですね……。
日比野はポツリと、そうこぼした。