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海外テニス

車いすテニスで全仏OP優勝小田凱人のロードマップを描く“陰の立役者”の思い<SMASH>

内田暁

2023.06.27

写真中央が小田凱人。右から軍司和久さん、長谷川光さん、熊田浩也コーチ、丹羽文太郎さん。写真提供:トップアスリートグループ

写真中央が小田凱人。右から軍司和久さん、長谷川光さん、熊田浩也コーチ、丹羽文太郎さん。写真提供:トップアスリートグループ

 車いすテニスは、障がい者スポーツと呼ばれる種目の中でも、最も先鋭的でプロ化が進んでいる競技だろう。

 国際テニス連盟(ITF)の管轄のもと、健常者と同様のツアーシステムが確立されているのが理由の一つ。世界各地で、年間150以上の大会が毎週のように開催され、選手たちは各国を旅しながら試合を重ねる。戦績に応じてランキングポイントと賞金が得られるのも、一般のテニスツアーと同様。なおその額、開催が迫る今年のウィンブルドンでは、シングルス優勝者は6万ポンド(約1,010万円)である。

 小田は早い段階から、「最年少」へのこだわりを隠さなかった。その理由を彼は、次のように語ったことがある。

「国枝(慎吾)さんには、経験や、とてつもない記録がある。そこには勝てないけれど、でも僕には、若さがある。最年少記録は、今の僕にしかできない強みです」

 さらには、こうも熱っぽく口にした。

「僕が車いすテニスを見始めた時にトップにいたのが、国枝さんや(ステファン・)ウデたち。既に30代の選手たちも多かった中で、彼らと同じ舞台で戦うためには、少しでも早く強くなる必要があった」
 国枝さんを筆頭とする憧れのスターたちが去る前に、あのステージにたどり着きたい——その渇望と「子どもたちのヒーローに」の理念が交錯する地点こそが、最年少記録だった。

 この小田の夢を実現するためには、一日でも早くツアーに参戦する必要がある。ただ、世界各地を転戦しポイントを稼ぐには、当然ながら、経費が掛かる。

 そのためにも周囲は、小田が14~5歳の頃からスポンサー集めに始動した。

「若いうちからプロとして生計を立てることを考え、そのためには何をすべきか逆算していきました」と軍司さんは明かす。

 アスリートとしてのポテンシャルはもちろん、社会的影響力や発信力——それらが小田にはあることを企業や支援者に示すには、最年少記録は、ある意味で最もわかりやすいPRポイントだ。
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