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海外テニス

車いすテニスで全仏OP優勝小田凱人のロードマップを描く“陰の立役者”の思い<SMASH>

内田暁

2023.06.27

昨年の「楽天オープン」決勝では、憧れの国枝慎吾(左)と対戦。2時間27分に及ぶ熱戦の末に敗退したものの、小田(右)は気迫あふれるプレーで観客を魅了した。写真:THE DIGEST写真部

昨年の「楽天オープン」決勝では、憧れの国枝慎吾(左)と対戦。2時間27分に及ぶ熱戦の末に敗退したものの、小田(右)は気迫あふれるプレーで観客を魅了した。写真:THE DIGEST写真部

 当時の最年少世界1位記録は、英国のアルフィー・ヒューエットが打ち立てた20歳1か月23日。その更新から逆算して描いた未来図が、前述したロードマップである。

 2021年時点で作成されたその道程は、以下のようなものだ。

 2022年、16歳で世界ランキング7位以内。

 2023年、17歳でグランドスラム出場。

 2024年、パリ・パラリンピックに出場しメダル獲得。

 2025年、19歳でグランドスラム優勝。

 そして翌年2026年5月8日の20歳の誕生日までに、世界ランキング1位——。

 このようなビジョンを描いた『説明資料』を手にスポンサー集めに動くと同時に、アスリートとしての環境づくりにも着手する。トップアスリートグループ加盟の“岐阜インターナショナルテニスクラブ”を拠点に定めたのが、その一つ。同クラブの熊田浩也を専属コーチとし、海外遠征にも帯同する体制を整えた。

 コロナ禍により試合の機会が失われた時、小田は熊田コーチと共に基礎練習やトレーニングに打ち込み、同クラブ所属の一般選手たちとも実戦形式の練習を重ねた。
 
 そうしてコロナ禍が開けると同時に、弾かれたように世界へ飛び出し、勝利とポイントをもぎ取っていく。

 グランドスラムの車いす部門を拡張する時流も、小田を後押しした。その恩恵もあり、2022年5月の時点で、予定よりも1年早く全仏オープンに出場。ここでベスト4に勝ち上がり、国枝さんと対戦したことで、小田の名はメディアでも多く報じられはじめた。

 決定的だったのは、10月の「楽天オープン」決勝で国枝さんと対戦し、ファイナルセットタイブレークにもつれ込む大熱戦を繰り広げたこと。そして昨年末、年間トップ8選手のみが出場できる“マスターズ”を制したことで、彼の実力とカリスマ性は、多くの人が知るところとなった。結果を出すたびに会見を開き、能動的に露出を増やす“営業努力”あってこその、人気と地名度向上でもある。
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