専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外テニス

車いすテニスで全仏OP優勝小田凱人のロードマップを描く“陰の立役者”の思い<SMASH>

内田暁

2023.06.27

予想を遥かに上回るメディアが集まった“凱旋会見”で小田は、今後のビジョンについて語った。写真:スマッシュ編集部

予想を遥かに上回るメディアが集まった“凱旋会見”で小田は、今後のビジョンについて語った。写真:スマッシュ編集部

 日本の車いすテニス界では、明確なプロの定義がある訳ではない。一般のテニスのような、日本テニス協会へのプロ登録も必要ない。本人が“職業”と自覚し、周囲もそのように見なし支援や投資などをすれば、それがプロの身分証明となる。

 小田は16歳の誕生日を控えた昨年4月末に、プロ宣言をした。当時のスポンサード企業は、所属先の東海理化や、日本ガイシ、ヨネックス等を含めて7社。

 それから1年。今年の全仏オープンを世界2位で迎える時点では、日本生命等が加わり10社となった。

 全仏オープンでの世界1位獲得も、運命的ではあるが、自ら引き寄せた定めの星でもある。

 実は今回、もし全仏オープンの前哨戦に出ていれば、小田はそこで1位になった可能性が高かった。ただ彼の周囲には、ご両親も含め「達成するなら全仏オープンで」との機運があったのは確かだという。
 
 実際に軍司さんは、全仏前に小田と熊田コーチに、東京の立ち食い蕎麦屋で次のように伝えていた。

「映像や写真が残らない大会で1位になっても、人々の記憶に残らない。でも全仏で1位になれば、映像や写真が一生残る。その後も事あるごとにその映像が使われ、凱人の人生は大きく変わるはず。だから、全仏で達成して欲しい」

 果たして小田がこの件を、どこまで意識したかはわからない。ただ結果的に彼は前哨戦をスキップし、そして多くの視線が集まるグランドスラムのセンターコートで、世界の頂点に立ったのだ。

 帰国後に日本で行なわれた“凱旋会見”では、想定以上の取材申請が集まり、急きょ会場を変更するほどに注目度は高まっている。

 その会見の席で小田は、「優勝を何度も経験したい、より多く(タイトルを)獲得したい」「パラリンピックの舞台を一番意識している」と語ったという。

 周囲の予想を遥かに上回るスピードで小田が駆け抜けた後には、轍のように“最年少”、“史上最速”の記録が刻まれていく。

 その疾走の先には、どのような景色が待っているのか?

 2021年時に描かれたロードマップは、次のように進んでいく。

「2026年愛知県開催アジア大会金メダル」「2027年キャリアグランドスラム達成」、そして「2028年ロサンゼルス・パラリンピック金メダル」

現地取材・文●内田暁

【PHOTO】小田凱人はじめ全仏オープン2023で奮闘する男子選手たちの厳選写真!

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号