現役時代に全仏オープン4連覇とウインブルドン5連覇を含む四大大会11勝を挙げ、世界ランキングでも1位を記録した男子テニス界のレジェンド、ビヨン・ボルグ氏(スウェーデン/69歳)。常に冷静沈着な振る舞いから「アイスマン(氷の男)」の異名で親しまれた彼は2023年に「進行が早いタイプ」の前立腺がんを患ったものの、手術を経て現在は寛解状態となっている。
しかし病気を告げられた時は、テニスコートでは抱いたことのない感情が押し寄せてきたと、昨年まで男子団体戦「レーバーカップ」で欧州選抜チームのキャプテンを務めたボルグ氏は振り返る。
「実はずっと前立腺がんの検査を受けていた。23年に再び検査を受けたところ、医師から『結果があまり良くなかった』と言われ、手術が必要だとも伝えられた。その時は他の場所に転移しているのかもわからず、気持ち的にとてもつらかった。その後医師からは『状況はかなり悪く、必要な処置はしたが、まだ身体の中で眠っているがん細胞がある』と言われた。だから私はまるでウインブルドン決勝を戦っているかのような日々を過ごしていた」
英公共放送『BBC』のインタビューでそう明かした同氏は、先日妻のパトリシアさんと共著した自伝『Heartbeats』を出版。そこでも病気との闘いが詳しく記されている。最近は前立腺がん予防の啓発活動にも力を注いでいるそうで、特に50歳を超えた人々へ向け、定期的な健康診断の重要性をこう訴えた。
「この病気が怖いのは、自覚症状がないことだ。元気にしていても、突然病気になってしまう。私自身は今のところは順調だが、将来どうなるかはわからない。現状私は6カ月ごとに検査を受けていて、2週間前の検査も問題なかったから、今は大丈夫。
だが一日一日、あるいは1カ月単位で今を懸命に生きていくしかないのが現実だ。毎年、多くの人が前立腺がんで亡くなっている。だから検査を受けられる機会があれば、必ず受けてほしい」
ボルグ氏と言えば神童として次々と歴史を塗り替え、あらゆる最年少記録を樹立したが、最後は「太陽に近づきすぎた」ように燃え尽き、25歳の若さでキャリアを終えた。今回のインタビューでは病気の告白に加え、知られざる苦悩も次のように語っている。
「もう十分だったし、競技へのやる気や探求心も失ってしまった。もしその後がどうなるかわかっていたら、テニスを続けていたと思うが、その時は何も考えられなかった。今の選手たちには苦悩を乗り越えるための様々なツールがあるが、当時の僕には何も方法がなく、途方に暮れていた。
薬やアルコールなど、現実逃避のためにそういったものに手を出した。もちろんそんなものは何のプラスにもならないし、人を破壊するだけ。何度も死にかけたのは事実だ。それでも人生を立て直し、今はとても幸せに過ごせている」
『Heartbeats』では、今回明かされたボルグ氏の人生の暗部も詳細に描かれており、読者に深い印象を残す内容となっている。彼の人物像や栄光と挫折を知る上で、必読の一冊だ。
文●中村光佑
【画像】ボルグ、コナーズ、エドバーグetc…伝説の王者たちの希少な連続写真
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しかし病気を告げられた時は、テニスコートでは抱いたことのない感情が押し寄せてきたと、昨年まで男子団体戦「レーバーカップ」で欧州選抜チームのキャプテンを務めたボルグ氏は振り返る。
「実はずっと前立腺がんの検査を受けていた。23年に再び検査を受けたところ、医師から『結果があまり良くなかった』と言われ、手術が必要だとも伝えられた。その時は他の場所に転移しているのかもわからず、気持ち的にとてもつらかった。その後医師からは『状況はかなり悪く、必要な処置はしたが、まだ身体の中で眠っているがん細胞がある』と言われた。だから私はまるでウインブルドン決勝を戦っているかのような日々を過ごしていた」
英公共放送『BBC』のインタビューでそう明かした同氏は、先日妻のパトリシアさんと共著した自伝『Heartbeats』を出版。そこでも病気との闘いが詳しく記されている。最近は前立腺がん予防の啓発活動にも力を注いでいるそうで、特に50歳を超えた人々へ向け、定期的な健康診断の重要性をこう訴えた。
「この病気が怖いのは、自覚症状がないことだ。元気にしていても、突然病気になってしまう。私自身は今のところは順調だが、将来どうなるかはわからない。現状私は6カ月ごとに検査を受けていて、2週間前の検査も問題なかったから、今は大丈夫。
だが一日一日、あるいは1カ月単位で今を懸命に生きていくしかないのが現実だ。毎年、多くの人が前立腺がんで亡くなっている。だから検査を受けられる機会があれば、必ず受けてほしい」
ボルグ氏と言えば神童として次々と歴史を塗り替え、あらゆる最年少記録を樹立したが、最後は「太陽に近づきすぎた」ように燃え尽き、25歳の若さでキャリアを終えた。今回のインタビューでは病気の告白に加え、知られざる苦悩も次のように語っている。
「もう十分だったし、競技へのやる気や探求心も失ってしまった。もしその後がどうなるかわかっていたら、テニスを続けていたと思うが、その時は何も考えられなかった。今の選手たちには苦悩を乗り越えるための様々なツールがあるが、当時の僕には何も方法がなく、途方に暮れていた。
薬やアルコールなど、現実逃避のためにそういったものに手を出した。もちろんそんなものは何のプラスにもならないし、人を破壊するだけ。何度も死にかけたのは事実だ。それでも人生を立て直し、今はとても幸せに過ごせている」
『Heartbeats』では、今回明かされたボルグ氏の人生の暗部も詳細に描かれており、読者に深い印象を残す内容となっている。彼の人物像や栄光と挫折を知る上で、必読の一冊だ。
文●中村光佑
【画像】ボルグ、コナーズ、エドバーグetc…伝説の王者たちの希少な連続写真
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